ハイライツ株式会社
取材・文:瀬尾陽(JDN) 撮影:木澤淳一郎

公開日:2018/06/28

働き方インタビュー

社名にこめられた使命を実直かつしなやかに追求。“想い”を深く汲みとり、ブランドの核心にデザインで光をあてていく

ハイライツ株式会社

大山晃弘 アートディレクター

戸田茜 デザイナー

「ブランドを輝かせる力になる。」ハイライツ株式会社(以下、ハイライツ)のミッションはとても明解だ。少数精鋭で、ブランドサイトやキャンペーンサイト、ポスターや野外広告、新聞広告、パッケージ、CI・VIからはじまるブランディングなど、さまざまな領域のプロジェクトを手がけてきた。その結果が評価され、国内外のデザインアワードを数多く受賞している。ブランドの核心を見いだし、光をあてることに腐心してきた彼らは、ともすればストイックに見えてしまうが、とても「人好き」な雰囲気のする会社というのが率直な印象だ。ハイライツの立ち上げメンバーのひとりである大山晃弘さんと、昨年8月に入社した戸田茜さんのおふたりに、ブランドを輝かせるためにデザインだからできること、そしてハイライツのこれからについてうかがった。

ブランドの核心を理解することで、芯をぶらさずに表現していける


Q. ハイライツに入社したきっかけ

大山晃弘さん(以下、大山):代表の下川(大助)とは前職で一緒だったのですが、ほぼ同時期にフリーランスになりまして、その後もよく一緒に仕事をしていたんです。それから少しして、下川から「そろそろ会社にしたい」という話があり、僕はイラストを使ったデザインを得意としていたので、彼となら自分の能力を活かせるなと思って参加しました。立ち上げメンバーは下川と僕と、もう1人も前職で一緒だったWebデザイナーです。それが2010年5月のことです。

ハイライツ株式会社 アートディレクター 大山晃弘さん

ハイライツ株式会社 アートディレクター 大山晃弘さん

戸田茜さん(以下、戸田):私は去年の8月にハイライツに入社したので、まだ1年経たないくらいです。まわりからはデザインが良い会社という話を聞いていました。前職では、デジタル領域の最新技術を使った案件が多く、自分がどういう風にデザインで関わっていくべきか考えていました。その時に、最新技術を効果的に活かせるようになるには、もっと根本的なアートディレクションの力が必要だなと感じたんですね。私自身、Webも紙もパッケージも、ビジュアルに関わるすべてをアートディレクションできるようになりたかったですし、そういう力を身につけていけるチャンスがあると思ったからハイライツに入社しました。

ハイライツ株式会社 デザイナー 戸田茜さん

ハイライツ株式会社 デザイナー 戸田茜さん

大山:そこは、まさに弊社が今後さらに広げていきたいと思っているところです。僕はデザイナーになって10年以上経ちますけど、自分がプレイヤーとして動くだけじゃなくて、みんながどういう気持ちで仕事に臨んでいるかをちゃんと理解したうえで、これから仕事の領域を広げていくにはどうしたらいいのか意識するようになってきました。

Q. 最近手がけた代表的なお仕事

戸田:入社してすぐに担当した、ヤッホーブルーイングさんの『よなよなエール』のブランドサイトが印象深いです。ヤッホーブルーイングさんの代表の方との打ち合わせにも参加させていただきました。『よなよなエール』はすでに名前が立っているブランドでしたし、ブランドに込められた想いがすごく伝わってきました。その想いを感じた上でデザインができたので、とてもやりがいがありました。

20周年の節目に初めての味とパッケージデザインをリニューアルした『よなよなエール』のブランドサイト

20周年の節目に初めての味とパッケージデザインをリニューアルした『よなよなエール』のブランドサイト

ティザーサイト公開後、本番サイトを制作するにあたって、改めて先方と『よなよなエール』の“らしさ”についてすり合わせる機会を設けさせていただきました。いくつか挙がっていたキーワードに対し、ビジュアルイメージを当てはめていくという作業を、ヤッホーブルーイングさんの代表や担当の方たちとワークショップ的に行えたのはとても有益なことでした。最終的な方向性としては、原点に戻るかたちで、パッケージデザインの世界観を活かすことがいまやるべきことだと、全員で共有できました。単に画をつくるということだけじゃなく、みんなで意識を共有してつくっていく提案ができたので、そこは私としてはすごく勉強になりました。

――ちなみにお酒はお好きなんですか?

戸田:お酒は……とても好きです(笑)。『よなよなエール』には本当にお世話になっています。私は長野県出身なのですが、ヤッホーブルーイングさんも長野県の企業なので親しみがありました。なじみのある商品に関われたのですごく嬉しかったです。

大山:僕は長く携わっている案件で「Piene(ピーネ)」というブランドがあります。ブランド自体はもともとあったわけではなく、このブランドを立ち上げる時にお声がけいただいた案件です。

「Piene」。ブランド立ち上げのブランディングとロゴ制作、およびパッケージラベルをハイライツで制作

「野菜と乳酸菌と暮らす」という新しいライフスタイルを提案するブランド「Piene」

本件ではパッケージやツールのデザインだけでなく、ブランディングからトータルで関わっています。ブランドのネーミング自体は先方ですでに決められていましたが、ロゴやブランドの世界観はどうするかとか、今後のラインナップをどう展開していくのか、というところをハイライツでも一緒にやっていました。最近は商品がそろってきたのでギフトボックスもラインナップに加わりました。

これまでのブランディングの案件で、一式丸ごと請け負うことはあまりなかったのですが、つくり上げたものをズラッと並べてみると改めてうれしいものですね(笑)。でき上がったものにも満足いただいけていますし、デザインの書籍や雑誌などでも少しずつ掲載されるようになってきているので、すごく良いものがつくれてきた実感があります。

やっぱり一般消費者が買う食品ということもあるので、ユーザーにどう響かせていくか、そのためにはデザインでどう応えるか、それをいつも以上に考えましたね。難しいところはあるんですけど、その分やりがいがあっておもしろいですね。今後はそういうところで得た知識を共有して、みんなのスキルアップに役立てていきたいなと思っています。

――ハイライツとしての仕事の幅が広がっていくなかで、どういったことを大事にしてデザインしていますか?

大山:まずは企業やブランド全体のことを理解するのは当然なんですけど、その担当者の方たち個人個人が持っている想いや趣味、いままで触れてきたもの、いま興味があることなどといった細かい部分、ブランドを立ち上げることになった経緯とか、最初のうちにできるだけ深く汲み取るようにしています。そこの核をはじめに知っておくことで、Webにしてもグラフィックにしても芯をぶらさずに、それぞれでおもしろい表現を採り入れることも意識していけると思います。

戸田:ハイライツは流行りの手法には偏らず、きちんとクライアントの要望に応えて、最適なものをつくっていくのがある意味で会社としての個性で、そこがすごく良いなあと思っています。

大山:ありがとう(笑)。まずはお客さんのことをちゃんと考える、それに応えるためにはどういうアウトプットが最適なのか選択することを心がけていますね。その上でアナログ的な表現にするとか、最先端の技術を採り入れるとか、状況に合わせてチョイスするようにしています。

ハイライツ・大山さん、戸田さんのインタビュー風景の画像

良い環境で仕事に臨めるよう、お互いを知り、本物を体験する


Q. ハイライツの社風

大山:外から見ると、ハイライツはストイックな会社という印象を受けるみたいで……実はこうなんだよというのをお話ししたいと思います(笑)。最近で言うと、戸田が「ごはん会」というのをはじめたりとか、会社の費用で2週に1回は必ずみんなでランチへ行くとか、そういう社内の交流の場を増やして、お互いがどんな人なのか理解することを積極的にしています。直接仕事には関係のない話でも、お互いの考えを知るのはすごく重要なことです。社内の空気が良くなると、仕事に臨む時の姿勢も良い方向に運ぶと思うんですよね。

あと、ハイライツには「行動指針」というものがあり、その中で「あらゆる分野の“本物”を体験し、人としてセンスを磨く。」ということも掲げているので、みんなで工場見学へ行ったりしています。この間は製紙業界大手の特殊東海製紙さんへ見学に行ってきました。

「あらゆる分野の“本物”を体験し、人としてセンスを磨く」というハイライツの行動指針のひとつに則り、製紙業界大手・特殊東海製紙の三島工場を見学するツアーに社員そろって参加

「あらゆる分野の“本物”を体験し、人としてセンスを磨く」というハイライツの行動指針のひとつに則り、製紙業界大手・特殊東海製紙の三島工場を見学するツアーに社員そろって参加

戸田:特殊東海製紙さんがツアーを組んでいるので、遠足みたいにバスで静岡まで行きました(笑)。

大山:自分が画面上で行なうデザインにはすぐには活きないかもしれないですけど、印刷の現場を知っておくことで、いろいろ考えていく時のフックの1つになると思うんですよね。

――ちなみに「ごはん会」というのはどういうものですか?

戸田:私の実家がお米をつくっているので、私はちょっとお米の味にうるさいんですよ(笑)。会社のみんなで飲んでいる時に、代表の下川に「会社でおいしいごはんが食べたいから炊飯器を買って欲しいです!おいしいお米は持ってくるので!」というお願いをしたんです。下川からは「じゃあ、それを会社のイベントにしよう」って言ってもらえて。

「ごはん会」の様子

「ごはん会」の様子

以前から、みんながつくったデザインを共有したいと思っていたけれど、それぞれの案件が別々に進んでいるので、なかなかタイミングを合わせられずにいました。それを「ごはん会」でやろうということになりました。炊き立てのごはんと、お酒もちょっと飲みながら、全員がやっていることを発表をして、それに対して意見しあうっていうのを月1でやっています。みんながどういうことに苦労しているのか、でき上がったものだけを見ても意外とわからなかったので、良い共有の場になっていると思います。

大山:案件が終わった後、またすぐ次に違う案件がはじまってしまうので、まとめる作業が後回しになりがちなんですけど、みんなでごはんを食べながらの楽しい会になれば、けっこうやる気になるものだなって思いました。

戸田:たまに会社のみんなで飲みに行くこともあるのですが、やっぱり外でとなると調整が必要だったりするので、会社で軽く晩ごはんを食べるくらいのフランクな感じでやっていきたいですね。

あとは、今年の3月に初めて社員旅行もしました。みんなから行き先の希望を募って投票して、私の意見が通って金沢に行きました。ツアーのプランも自由に任せてもらい、しおりも気合を入れてつくりました!けっこう良い旅館に泊まって、みんなで美味しいカニも食べましたね。下川はカニが食べれないんですけどね(笑)。

大山:最初にここまでのしおりをつくって来られると、次回からのハードルが上がりますよね……(笑)。

戸田:つくりはじめたら楽しくなってきてしまって(笑)。金沢にオフィスと本屋さんを構えている、Hotchkissさんにもアポを取ってお邪魔させてもらいました。社員旅行から発展して、会社の交流にもなったりして楽しかったですね。

大山:こういう社内の交流を積極的にやると、やりはじめる前に比べると良い効果が生まれていると思いますよ。一日のほとんどの時間を一緒に過ごすわけですから、みんなの趣味とかパーソナルな部分を共有できて、一体感が生まれてきました。

戸田:いままでは社員数が多い会社にいたので、この規模感の会社は初めてなんですけど、みんなが何をやっているのか見えたり、コミュニケーションが取りやすかったりして、そういう環境は気に入っています。会社の雰囲気とか仕組みを自分たちでつくっていけるところはすごく良いですね。過去に実験的に行った3週間に1度のリモートワークデイとか、下川がいつも柔軟にやろうと言ってくれるので、いろんなことにトライしやすいです。下川は福岡出身なので、九州男児というか、わりと兄貴肌で面倒見のいい社長という感じです。

大山:下川はみんなの個性を伸ばしたいということはよく言っていますね。それはみんなにとっても良いことですし、結果それは会社が良くなっていくことだから。

Q. 今後、取り組んでいきたいこと

戸田:私は地域に関わるようなお仕事に興味があります。そこにいる人の顔が見えて、その人たちの役に立てるようなことがしたいですね。さっきからごはんの話ばかりしちゃうんですけど(笑)、お米とか野菜とかのブランディングもできたら良いなと思っています。

大山:そういう地域に根差しているモノとかコトだと、お客さんも含め地域の人たちとコミュニケーションを取っていくので、難しい部分はあるけど役に立てている実感が湧きますよね。そういう仕事は、今後ハイライツとしてやっていきたいことのひとつですね。あと、僕はもうちょっと会社の上層の立場から言うと、そういう案件に取り組める社内のベースを築いていきたいですね。みんなが気持ち良くデザインに臨める環境を整えていきたいと思っています。

Q. ご自身のお仕事をほかの言葉に例えると?

戸田:デザイナーは「翻訳家」であるべきだと知り合いが言っていて、なるほどなと思ったんです。ただそれだけで見たら何だかわからないものを、それが何であるかわかるように訳して形にする役割ですかね。だから、もしかしたらビジュアルの表現ではなくて、ほかのやり方でもいいのかも知れない、そうやって訳されたものをアウトプットするお仕事なのかもなと思っています。そういうことを意識してはいますね。

大山:大学生の時に哲学の授業で先生が言っていた、「無意味だが有意義」という言葉をいまでも時々思い出すことがあります。まさにこの仕事ってそういうことなのかなって。なくてもいいものだけど、やることによってすごく幸せになるとか、充実感を得られるということだから。そして、それによって人生が豊かになると信じて僕らはこの仕事をしています。

PROFILE
ハイライツ株式会社
社名のハイライツ(highlights)は「光をあてる」という意味。ブランドを輝かせることを使命に、それぞれのモノ・コトの背景にある、あらゆるライフを見つめながら、ブランドの根幹をつくり構築し、未来を照らすようなコミュニケーションを紡いでいく。
https://www.highlights.jp/

大山晃弘 アートディレクター

1982年生まれ。岡山県出身。東京造形大学デザイン学科卒業。ハイライツ立ち上げメンバーとして入社。「神は細部に宿る」をモットーにデザインに取り組み、ブランディング、Web、グラフィック、パッケージ、イラストなど幅広い領域の制作を担当。受賞歴として、Cannes Lions、グッドデザイン賞など多数。

戸田茜 デザイナー

1984年生まれ。長野県出身。京都造形芸術大学情報デザイン学科卒業。広告プロダクションにてWebやグラフィックデザインの経験を経て、2017年からハイライツ株式会社に所属。