株式会社ミクシィ
タイトルロゴ:かねこあみ 編集:堀合俊博(JDN)

公開日:2020/05/18

働き方インタビュー

【HOW WE WORK REMOTELY vol.3】株式会社ミクシィ

株式会社ミクシィ

橋本卓朗 Webデザイナー

原由佳理 映像デザイナー

コワーキングスペースやシェアオフィスの普及、時差出勤・フレックス制度といった働く時間の変化、さらには働き方改革による副業の解禁など、ここ数年で働き方に関するさまざまな議論が進んできました。そんな中、COVID-19の感染拡大によって急速なリモートワークの普及が進み、2020年はこれからの働き方について考えていく上で大きな区切りの年となりそうです。

デザイン・クリエイティブに関わるさまざまな方の「リモートワーク」の実践例をご紹介する「HOW WE WORK REMOTELY」。今回は、ミクシィのインハウスデザイナー2名にお話をお聞きしました。

デザイン情報サイト「JDN」では、同社のインハウスデザイナーの働き方について取材しましたが、ほどなく緊急事態宣言が発令されたことにより、スタッフはすべてリモートワークへ移行。その後、ミクシィでの働き方やコミュニケーションはどのように変化したのでしょうか?デザイン本部制作室Webデザイングループの橋本卓朗さんと、デザイン本部制作室映像制作グループの原由佳理さんの実践例をうかがいました。

Q.リモートワークはいつから実践していますか?

橋本卓朗さん(以下、橋本):本格的な導入は3月末からでしたが、3月上旬に「リモートワークDay」と称して、長期的なリモートワークの必要性が発生したときに備えて、業務の進め方や設備の準備などの課題を把握するために、試験的に1dayで全社リモートワークが実施されたので、「突然のリモートワーク開始!」といった感じにならなかった点はよかったなと思います。現在自分が所属しているグループでは、よほど緊急度が高い業務や案件でない限り、メンバー全員が原則フルリモートで業務を行っています。

原由佳理さん(以下、原):私の在籍する映像制作グループでは、4月の頭からリモートワークに移行しました。3月上旬に実施されたリモートワークのテストでは、「業務の内容的にリモート操作での仕事は不可能ではないか」、という結論になったんです。

しかし、それから 実際にリモートワークが実施されるまでに会社が準備や制度を整えてくれました。作業用PCの配送や、在宅で必要になる備品の購入支援制度のおかげで、今ではとても快適にリモートワーク生活を送れています。

Q.リモートワークのメリットは何だと思いますか?

橋本:やはり通勤時間がなくなったことは大きいと思います。自分は通勤自体は徒歩圏内ではあったのですが、それでも朝起きて準備をして出勤、という時間のコストが大幅にカットできているのは大きいです。その分、余った時間は睡眠時間に充てるなどができているので、自分はそこがメリットだと感じています。

原:とにかく作業に集中できるので、作業効率が上がったのを感じています。集中できる環境を自分で整えることができるので、思っていたよりも支障なく業務遂行できていますね。あとは通勤がなくなったことによって、朝からストレスのない状態で仕事をはじめられています。

Q.逆に、リモートワークのデメリットは何だと思いますか?

橋本:打ち合わせなどのビデオ通話では、直接顔合わせができないので相手の表情や身振り手振りなどから微妙なニュアンスを読み取ることが難しいなと感じています。たとえば、比較的多くの人が関わる案件だと、認識のすれ違いが生まれてしまったり、コミュニケーション面での課題を感じています。

原:グループ内でのコミュニケーションが減ってしまうことが一番のデメリットだと感じています。もともとコミュニケーションが盛んなチームだったこともあり、今誰が何に興味を持っているのか、どんなことに困っているのかが見えづらい状態になってしまうなぁと。

なので、なるべくお互いの状況を把握するために、毎日「Google Meet」のビデオ会議で、チーム朝会を開いて制作状況や困りごとの共有を行うようにしています。

渋谷スクランブルスクエア内のミクシィ本社のエントランス

Q.リモートワークのために使用しているツールや、おすすめのものを教えてください。

橋本:コミュニケーションにおいては、リモートワーク実施前から活用していた「Slack」をチャットツールとして利用しています。もちろん、メンバー間でのやりとりはオフィスに出勤していた頃以上に丁寧に行うよう心がけていますが、同時にカスタム絵文字を使用したやりとりも多く行われていて、真面目な中にもほっこりするシーンが生まれていい雰囲気となっています。

ビデオ通話による打ち合わせは主に「Google Meet」を利用しています。社内のカレンダーツールと連動しているため使い勝手がいいです。

また、チーム内では「1 on 1」を定期的に実施しているのですが、一人暮らしの自分はリモートワークの環境では日常で誰かと話す機会が極端に少なくなるので、ビデオ通話を通じたコミュニケーションは非常にありがたいです。

自宅では前までポケットWiFiを回線として利用していたのですが、業務利用だと厳しい場面があり、最近固定回線に切り替えました。

そのほかでは、自分はもともと外部ディスプレイを持っておらず、買うかどうか悩んでいたのですが、リモートワーク開始時期に会社から機材購入支援制度としてひとりあたり2万円(税別)の支給が発表されたので、制度を利用して購入できたのはすごく助かりました。

橋本さんのご自宅の仕事場。「基本はシンプルに。椅子には結構お金をかけてます」

ノート型のホワイトボード「nu board」。「持ち運べるホワイトボードな感じでUI設計を考える時にも便利です」

橋本さんがリモートワーク開始で買ったもの。(左)「ON/OFFのメリハリが必要となるため、 気合いを入れるときはリアルゴールドでエナジーチャージしています!30缶入りで買いました(笑)」(右)「自宅はかなり足元が冷えるため、ふかふかのルームシューズを購入。頭寒足熱ですね」

原:高さや角度が調節できる机がとても役に立っています。自宅の環境的に座椅子での仕事となるので、絶対に首や肩、腰に負担がかかると思い、会社が用意してくれた在宅環境構築のための支援制度を利用して購入しました。

キーボード操作だけの時やペンタブレットを使用する時など、自由に角度が変えられるので、座椅子でも無理なく仕事ができています!

原さんのご自宅の仕事場

Q.リモートワークを通して気付いたことや、感じたことを聞かせてください。

橋本:もともと「Slack」や「G Suite」などのクラウドツールを積極的に利用した働き方だったため、今回のフルリモートによる仕事の進め方への影響はそこまでなかったように感じます。また、今後の働き方としては、例えば週2日はリモート勤務できるなど、働き方を選べる時代が来るのではないかと感じています。

原:丁寧なコミュニケーションがとても大事だなと感じます。同じ空間で仕事をしていると、「いつもの感じで」ぐらいのざっくりとしたやりとりでも通じることはあったと思うんです。わからないことがあればいつでも聞くことができて、その都度すり合わせができる環境だったので。でも、リモートワークではなかなかそうもいかないなと実感しました。

「ビデオ会議するほどじゃないかな」とテキストだけでやりとりしてしまったことで、意図が伝えきれないまま制作が進んでしまい、後々コミュニケーションコストが増大してしまうこともあったりしました。今まで以上に、しっかりと資料やクリエイティブの意図、方向性などを事前にすり合わせて制作を進める必要があると実感しています。

Q.リモートワークをする上で「こんなものがあればいいのに」などのアイデアがあればお聞かせください。

橋本:今後評価制度の視点でいえば、さまざまな組織が定量的かつ成果主義が評価の軸になる気がしています。とはいえ定性的な部分もチームで働く上で大切な部分ですので、時代にあった評価の仕組みが今後できていくといいのかなと思います。

原:直接話すことが減ったことにより、個々の技術や能力によって仕事をこなすことになりがちで、ノウハウや技術の蓄積が難しくなっていると感じています。幸い弊社にはドキュメント共有ツールの「DocBase」が導入されているのでナレッジ共有の場はあるのですが、テキストではわかりづらい内容や実際の作業画面などが簡単に共有できるようなツールがあると、クリエイターがもっと積極的にナレッジ共有を行えるのではないかなと思います。

Q.最後に、リモートワークを実践している方に、メッセージやアドバイスがあればお聞かせください。

橋本:クリエイターの仕事の多くが、さまざまな課題を視覚的な表現で解決することだと思いますが、昨今の社会情勢を踏まえると、今後クリエイターの仕事のあり方が何かしらのかたちで変わってくるのではないかと感じています。リモートワークという環境の中ではありますが、人との「コミュニケーション」の結果として成果物が世に出るという仕組みは変わらないと思いますので、私も他のクリエイターのみなさんと同じくクリエイター魂を大切にし、クリエイティブな仕事をやっていけたらなと思います。

原:クリエイターは、時間があるならある分だけ制作時間にあててものづくりがしたいという気持ちがあると思うんです。そしてリモートワークだと、それができる環境にある。なのでついつい勤務時間度外視で制作してしまったりするんですよね。

でも、リモートワークの今だからこそ、より勤務時間を意識して決まった時間に仕事をはじめて、決まった時間にPCをシャットダウンすること。そして、美味しいご飯を食べてゆっくり休むことをおすすめしたいです。仕事とプライベートをきちんと分けて、体と心のストレスを軽減し、健康的にいいクリエイティブを生み出せる環境を整えることも、クリエイターの仕事のひとつかなと思っています。

PROFILE
株式会社ミクシィ
1997年の創業以来、SNS「mixi」やスマホアプリ「モンスターストライク」など、友人や家族といった親しい人と一緒に楽しむコミュニケーションサービスを提供。 人々の生活がより豊かになる未来を思い描き、ITの側面からコミュニケーションの活性化を促す事業・サービスを推進し、より良いコミュニケーションの創造に取り組んでいる。 https://mixi.co.jp/

橋本卓朗 Webデザイナー

デザイン本部制作室Webデザイングループ所属。大阪デザイナー専門学校を卒業後、Web制作会社を経て2016年ミクシィに中途入社。現在はミクシィが展開するエンターテインメント事業ブランド「XFLAG」関連のWeb広告やサイトのデザインを担当。

原由佳理 映像デザイナー

デザイン本部 制作室 映像制作グループ所属。HAL大阪を卒業後、CG映像制作会社に入社。ショットワークチームのチーフとしてコンポジットなどの仕事を経験。その後2016年にミクシィに入社。モンスターストライクの映像ディレクション、制作を行なっている。