CC INC.
取材・文:平林理奈 撮影:高木亜麗 編集:瀬尾陽(JDN)

公開日:2019/01/28

働き方インタビュー

広告制作の前段階から伴走し、より深い問題解決を目指す

CC INC.

戸田宏一郎 CC INC.代表/クリエーティブディレクター、アートディレクター

株式会社電通から独立し、2017年1月、株式会社dofの齋藤太郎さんと共に株式会社CC(以下、CC INC.)を立ち上げた戸田宏一郎さん。広告制作からではなく、コンセプトづくりなどプロジェクトの川上から携わり、クライアントとの厚いコミュニケーションを通じて問題解決に取り組んでいるという。仕事で大切にしていることや、醍醐味などについてうかがった。

何より「傾聴」を大切にしているから、オフィスの半分は打ち合わせスペース


Q.CC INC.設立のきっかけを教えてください

戸田宏一郎さん(以下、戸田):社名の「CC」は、“Creative & Consulting”の略です。代理店にいた頃は、広告のアウトプットを担当し、宣伝費としてフィーを得るというかたちでしたが、もっと前の段階からクライアントに関わることができれば、こんなに宣伝費をかけなくてもいいんじゃないか……とずっと感じていました。それに、メディアミックスの時代であるいま、ひとつの広告にできることには限界がありますよね。そうした思いから、商品やプロジェクトの構想段階からご一緒させてもらい、事業設計やデザインを含めた世界観づくりを行うためにCC INC.を立ち上げました。

実際に川上から携わってクライアントにお話を聞いてみると、意外な課題があぶり出されることが多くあります。それに対して、絵やデザインといったビジュアルを用いて「整理するとこうだから、次にこういうことを考えてみてはどうですか?」という話をすると、「そういうことを考えてくれる人がいままでいなかった!」と喜んでもらえることが増えてきました。

戸田宏一郎さん(CC INC.代表)

Q.仕事をするうえで大事にしていることは?

戸田:クライアントと多くの時間を共有して話を丁寧に聞くという、初期段階を大切にしています。うちのオフィスの半分は、ガラス張りの打ち合わせスペースが占めているでしょう?もちろんプレゼンや打ち合わせをする場所ではあるのですが、そのあとにクライアントと一緒にお酒を飲んだり、軽く食事をするためのスペースでもあるんです。ワインセラーやバーカウンターも設置していて、風通しのよい空気のなかで忌憚のないコミュニケーションを取ることができます。

オフィス環境といえば、立地にもこだわりました。デザイン事務所というと青山周辺に多く集まっていますが、ここは虎ノ門と新橋の中間に位置する新虎エリアで、意外とクリエーティブ関連の事務所も少なくありません。2020年の東京オリンピックで競技場が集まるエリアと国立競技場を結ぶ幹線道路も近く、今後活性化が進む街であることにも惹かれました。

従来の広告制作のフローでは成しえない、「物語」の構築


Q.これまでに手がけた代表的なお仕事

戸田:本田技研工業株式会社の『Honda_Go,Vantage Point.』は、電通時代に最後に携わった案件。それをCC INC.で引き継ぐ形で継続し、足かけ2年ほどの大きな仕事になりました。Hondaというブランドを再活性化させるために、大々的に企業広告的なものを打ち出したいというオファーを受けてスタートした、新しいブランドコミュニケーションです。ものづくりの新しいプラットフォームをつくる案などもあったのですが、最終的にはテレビCM、Webサイト、SNS、渋谷109のシリンダー広告をはじめとした屋外広告など、メディアを横断しながら「移動することによって得られる価値」を訴求していくことになりました。そのために、製品そのものの広告とは違う、少し不思議な佇まいをしています。

携わっているのは、全体のメディア設計やバンド『ONE OK ROCK』の起用、カメラマンやイラストレーターの選出などすべて。その膨大な作業のスタート地点は、やはり対クライアントやチーム内での話し合いでした。たとえば、二輪事業のロゴであるウイングマークは「サモトラケのニケ」の彫像から着想を得たものなのですが、その理由や、ロゴがつくられた当時、どういうものが世の中に求められていたのかということをあらためて紐解いていった。そうやって積み重ねた、一見すると雑談にも思えるような話からヒントを得て、具体的な広告表現に落とし込んでいきました。

戸田さんがアートディレクションを手がける、Hondaの新たなブランドコミュニケーション『Honda_Go,Vantage Point.』第3弾。Hondaの原点である二輪をモチーフに、五感を解放する、新しい「野生」へのチャレンジ

渋谷エリアを中心に屋外広告を展開

渋谷エリアを中心に屋外広告を展開

最近だと、オフィスからほど近い、『THE CORE KITCHEN / SPACE』というスペースの立ち上げのお手伝いをさせていただきました。レストランでもあり、イベントスペースでもあるこの複合施設は、日比谷通りと環二通りの交点に立地しています。このエリアを文化・芸術の文脈で活性化するための、常に人の力を感じられる場所、何かを発信できる場所として生まれました。まだ建物が完成していない段階からプロジェクトに参加し、シンボルマークの制作を担当しています。

「CORE」という名前は先に決まっていて、まずは「CORE=芯」、それも、人間の起源を表すアダムとイブの「りんごの芯」がいいんじゃないかと発想しました。りんごの芯にある種が、「街や、そこで生まれた物事を次世代につないでいく」と考えると、重要なメタファーになると考えたわけです。そうして、りんごの芯を模したロゴマークが完成しました。街おこしの方法論はたくさんあるので、いろんなものを個別でつくってつないでいくよりは、中心にきちんとひとつの物語を据えることが大切だと思うんです。ロゴマークの制作だけでなく、その前段階から携わることによって、物語を考える、さらにはイベント内容の構想までも共有できたことはとてもよかったと思います。

虎ノ門と新橋を結ぶ通称「新虎通り」にオープンした『THE CORE KITCHEN/SPACE』。オリンピックのうねりで日々変化していくエリアの新しい拠点。集まる「人々」を繋げていくコアとなるカフェ機能を持ったオープンスペース

虎ノ門と新橋を結ぶ通称「新虎通り」にオープンした『THE CORE KITCHEN/SPACE』。オリンピックのうねりで日々変化していくエリアの新しい拠点。集まる「人々」を繋げていくコアとなるカフェ機能を持ったオープンスペース

戸田さんが手がけた『THE CORE KITCHEN/SPACE』のシンボルマーク。アダムとイヴ、知の象徴、りんごの芯がモチーフ

戸田さんが手がけた『THE CORE KITCHEN/SPACE』のシンボルマーク。アダムとイヴ、知の象徴、りんごの芯がモチーフ

Q.CC INC.の社風

戸田:設立から2年と若い会社ですが、スタッフも20代の若手がほとんどです。経験が少ないゆえに「これをやっといてね」と言ってもできないこともある。でも、そこがいいなと思っている部分でもあるんです。大きい会社でじっくりと下積みをするのももちろんいいのですが、うちのような小規模な会社でどんどんチャレンジしてもらって、一緒にチャンスを掴んでいきたい。スタッフには、3〜5年働いて別の場所に飛び立っていくくらいのつもりで仕事をしてほしいと伝えています。

普段では出会えない人たちとの打ち合わせにはなるべく参加し、時にはデザイナーの領域を超えた経験をさせながら、自分で案件を動かしていくことを早い段階からしてもらいたい。キャリアアップの場、勉強する場としてとらえてほしいので、インターンにも期待しています。僕らは学校では学べない経験を提供し、彼らからは若さの刺激をもらう。そうやって、Win-Winの関係を築けたらいいですね。

CC INC.の一員(?)。戸田さんの愛犬モモ

思いを発信できるこの仕事は、すごくおもしろい


Q.仕事のやりがいや醍醐味を教えてください

戸田:大規模で世の中への作用が見えやすい案件が多く、「社会とのつながり」を感じられることでしょうか。僕は、デザイン表現というものは、その事象が社会とどう関係しているのかを考えた先に生まれるものだと思っています。その感覚を育てるために、インターンにはよく、新聞やネットニュースを読んで、その日の出来事に対する所感を書いて提出してもらっています。世の中のタイムラインをキャッチしながら、「いま、ここで生きている」ことをデザインに直結させる。そうすると、仕事はもっとおもしろくなると思います。

Q.ご自身の仕事をほかの言葉にたとえると?

戸田:もともとなりたかった職業がふたつあって、建築家と医者です。僕の父親が医者で、叔父が安藤忠雄さんのもとでも働いていた建築家でした。若い頃はそのふたりに影響を受けていて、どちらかになりたいと思っていたんです。結果的にデザイナーになりましたが、いまの仕事はそのどちらにも似ていると感じます。特に、医者的な感覚で仕事をするのはとても好きですね。痛がっている人、何かにもやもやしている人、もしくは病気の兆候がある人を丁寧に診て、問題を解決していく。そういう仕事の仕方は、僕の原点になっています。

Q.最後に、今後の展望を聞かせてください

戸田:僕はこれまでずっと、自分の理想や思いを可視化することを大切にしてきました。社会に完全に落ちていかなくても、我々個人の能力を使って提案する仕事をしていきたい。例えば今年は形にならず、解決に至らないかもね、ということがあってもいいと思うんです。それはもしかしたら広告制作としてではなく、展覧会を開いたり、あるいは本や映像のカタチになるのかもしれません。

現状、CC INC.が手がけている案件は、60%が従来の広告制作で、30%がコンセプトづくりといったプロジェクトの川上から携わる仕事。今後は後者を増やして、割合を逆転させたいと思っています。そして残りの10%を使って、ビジョンや思いを発信していきたい。この仕事って、すごくおもしろいんですよ。雑談からプロジェクトが生まれることもあるし、ちょっとしたアイデアが仕事につながることもある。だからこそ、思いは常に発信していきたいですね。

PROFILE
CC INC.
企業やブランドにおけるさまざまな課題を、クリエーティブとデザインの力で発見し、解決するクリエーティブプラットフォーム。事業設計や商品開発など、ビジネスの初期段階では視覚化しがたいモノやコトをビジブルにすることで課題の共有化をはかり、本質的な価値やビジョンを生み出す。プロジェクトをプロトタイプの段階からスタートし、最終的にデザインやコトバ、映像、デジタルなど表現の力でアウトプットへと導いていく。

戸田宏一郎 CC INC.代表/クリエーティブディレクター、アートディレクター

1970年、佐渡島生まれ。ブランド開発からテレビCM、ポスターといった広告全般、ロゴマーク、CDジャケットなどを幅広く手がける。朝日広告賞、OneShow Design、D&ADなど国内外で受賞多数。株式会社電通を経て、2017年1月に株式会社CCを設立。

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