株式会社ビッテ
取材・文:佐藤理子(Playce) 撮影:木澤淳一郎

公開日:2018/09/05

働き方インタビュー

日々の雑談とDIYの精神が推進力!自分たちでつくって、自分たちでちゃんとマーケットに売っていく

株式会社ビッテ

神山友彦 代表取締役・デザイナー

杉浦真樹子 チーフデザイナー

荷口沙由里 営業

「こんなものがあれば、日常がもう少し楽しくなるんじゃないか」――。2013年の創立以来、そんなコンセプトのもと雑貨をつくり続けてきた株式会社ビッテ。その思惑通り、同社が手がける製品は、カラフルでポップなものから、使い勝手のよいシンプルなデザインのものまで。これまでキッチン用品、文具、バス用品を中心に展開してきたが、先日、ついに新ジャンルとなるオリジナルのアクセサリーも発表した。さらに活動の幅を広げていく同社の代表取締役の神山友彦さんと、チーフデザイナーの杉浦真樹子さん、営業の荷口沙由里さんの3人に、仕事の醍醐味や今後のビジョンを聞いた。
Q. 会社の事業内容を教えてください。

神山友彦さん(以下、神山):ビッテは、自分たちが「生活のなかに、こんなものがあったら少しだけ楽しくなるんじゃないか」と思えるものをつくっている雑貨メーカーです。商品化の判断基準は、「楽しい」か「楽しくない」かだけ。なにも「劇的に生活の質が向上する」とか、「劇的に安くて爆発的に売れる」とか、そういったものを目指しているわけじゃなくて。

株式会社ビッテ 代表取締役 神山友彦さん

株式会社ビッテ 代表取締役 神山友彦さん

杉浦真樹子さん(以下、杉浦):本当に領域を決めてないので、よくも悪くもいろんな商品がありますよね(笑)。

神山:手がけているのは自社商品とOEMがありますが、比率は7:3ぐらい。そのときどきで、かなり波はありますけど。

杉浦:季節によっても違いますしね。展示会が多い春は、おのずと自社商品が中心になります。ブースまですべて自分たちでDIYするので、もう、全員総出で作業してますね(笑)。逆に、年末年始はOEMが増えます。製造工場が中国にあるんですが、2月中旬の旧正月になると全部ストップしてしまうんですね。その前に仕上げないと出荷が間に合わなくなるから、年末年始はこちらも現地の工場も大忙しです。

株式会社ビッテ チーフデザイナー 杉浦真樹子さん

株式会社ビッテ チーフデザイナー 杉浦真樹子さん

神山:僕はメーカーの責任者として現地工場であれこれ指示しないといけないので、年末年始は毎年中国ですね。もっとも、それ以外にも中国には毎月のように出張していますけど。デザインは基本的に、OEMの大型案件は僕が担当して、そのほかのOEMや自社製品は杉浦にほぼ任せています。

杉浦:そうですね。OEMは営業と連携を取って商品企画から工場への指示出しまでやっています。自社製品に関しては、デザイナーだけでなく社員全員に案を出してもらって、私が製品のデザインに落とし込んでいます。最近スタートさせたアクセサリーの分野については、私と営業の荷口が中心となって商品デザインからパーツの仕入れ、製品の制作まで行っていますね。

荷口沙由里さん(以下、荷口):私、営業なんですけれどね(笑)。普段は、販売する側の視点に立った企画や意見を出したり、商品が仕上がったら売場をつくって売ってきたり……という仕事をしてますが。なぜかいま、ピアスばっかりつくっています。

株式会社ビッテ 営業 荷口沙由里さん

株式会社ビッテ 営業 荷口沙由里さん

神山:アクセサリーは事務所にあるUVプリンターとレーザーカッターを駆使してつくっているんですけど、たぶんこんなに手を動かす営業はいないと思います。もう普通に、電動ノコギリとかドリルとか使いこなしてますからね。自分自身も、もともとあんまり守備範囲を決めないでやりたいというのがあって。自分ができるなら、やりたいなら、幅広くやってしまえ!と思っています。

Q. ビッテを立ち上げた経緯を教えてください。

神山:ビッテを立ち上げる前は、プラスチックの日用雑貨メーカーの開発室に所属していました。デザイナーの杉浦は、前職で僕の部下だったスタッフ。独立したときに「私もやりたいです」って一緒についてきてくれたんですね。営業の荷口はビッテを立ち上げるときに採用したスタッフです。

当時からデザイナーとしてデザインだけやっていくというより、ものづくりの最初から最後まで――それこそ、資金をつくって、自分たちが考えた商品をつくって、売り場をつくって、販売していくという、すべてに関わりたいという思いが強かったんですよ。そこまでやらないと、デザインをした気がしないというか……。

でもやっぱり、メーカーの開発室では開発しかできなかったんですね。まあ、当たり前かもしれませんが。それで結局、「自分でメーカーをつくるしかないなあ……」という結論になりまして。そういうことを、普段から杉浦とも話していていたんですよね。

杉浦:神山から「メーカーを立ち上げるけど、ちょっと手伝ってくれない?」と言われたときには、「一緒にやりたい!」と即答しましたね。はじめのうちは大変だろうなと思っていました。でもそこは、お互いよくわかっていることだから。

神山:デザイン事務所だと、原価のほとんどが人件費や家賃だったりするけれど、メーカーとなると、仕入れや在庫の管理もある。工場に対しては全部先払いだし、在庫が売れないと一銭にもならない。デザイナーも営業も、全員が会社のキャッシュフローを考えていかないと、本当の意味でのスキルは足りてないんじゃないかって思っていますから。その辺のことはわかっていたほうがおもしろいという感覚は、営業の荷口もすごく理解していますね。

荷口:私は前職で、業種も職種もいまとはまったく違うことをしていまして。ある年、その会社で全然違う部署に異動することになったんですが、「どうせ新しいことをはじめるなら、好きなことをやろう」と思って潔く仕事を辞めたんです。そんなときにビッテの募集広告に出会いました。「雑貨も好きだし、メーカーを立ち上げるってなんだかよくわからないけれども面白そう!」と応募して、そのまま現在にいたるという感じです。

神山:いまではビッテのエースですよ。会社にもすぐ馴染んでくれましたし、商品販売に関しては荷口が主力になって進めてくれています。

Q. ビッテの社風を教えてください。

杉浦:ビッテの社風は……とにかく雑談が多い(笑)。だから、社内はかなりうるさいですね。

神山:でも雑談って、すごく大切なことだと思っています。新しいアイデアが、雑談から始まることも多いですから。それこそ、昨日見たドラマの話から、ご飯が美味しかったとか、しょうもない話も含めていろいろ話します。ふとしたきっかけから誰かが「こんなのつくれるんじゃない?」って言ったら、「おもしろそう!」「じゃあ、私、これやります!」と、周りも率先してどんどん巻き込まれていくという。

荷口:「アクセサリーをつくろう」ということになったもの、雑談がきっかけでした。雑談しながらも商品開発をして、仕入れや営業の仕事もしているんです。

杉浦:あと、淡々とした仕事のときも、おしゃべりが多くなりますね。例えば検品のときとか「私のほうが速い~」「勝った!」ってゲームをはじめたりして。そういうのが自然にできると、私はなんだかうれしくなりますけどね。

神山:ああ。それ、リアルだね。やっぱりメーカーって全然華やかな世界じゃないし、地味な仕事も多いから。それを楽しもうっていう気持ちがあるっていうだけで充分です。

Biite アクセサリー画像

Q. これまでに手がけた代表的なお仕事を教えてください。

神山:シンプルでベーシックな製品から、なんだかちょっと変わったユニークなものまで、いろいろあるんですが……。ロングセラーになっているのが、シリコーン樹脂でできた「アニマルラグコースター」。この会社を立ち上げてからすぐにつくった商品ですが、いまでもコンスタントに売れていますね。

寝そべった姿が可愛い「アニマルラグコースター」

寝そべった姿が可愛い「アニマルラグコースター」

杉浦:ネーム印を入れるケース「ピットン」は、吸盤で蓋が固定できて、片手でポンと押すことができる便利グッズ。

神山:うん。玄関とかに置いておくと便利で、実際に家でも使ってます。

吸盤でフタを固定できるので片手で押印することができるハンコカバー「ピットン」

吸盤でフタを固定できるので片手で押印することができるハンコカバー「ピットン」

荷口:それから、ソープディスペンサー「コロレ」。実は、いまでこそ人気商品になっていますが、発売前はバイヤーさんに紹介に行ってもことごとく「派手すぎる」と大不評だったんですよ。

杉浦:当時、トレンドとして、ナチュラルなテイストのものが受け入れられていたので……。

キャンディのようにキュートなスクエア型ソープディスペンサー「コロレ」

キャンディのようにキュートなスクエア型ソープディスペンサー「コロレ」

荷口:「ショップの棚で悪目立ちするから、仕入れたくない」という声がほとんどでしたね。もちろん、そういったマイナス意見も社内会議で報告しましたけど、ただ、弊社としても「他社と同じような商品をつくっても面白くない」「みんなが納得できるものであれば、そのまま押していこう」ということで、商品化を強行しまして(笑)。結果、それで成功し、いまは商談に行くとほぼ百発百中で仕入れてもらえますからね。

杉浦:バイヤーさんの判断が必ず正しいとは限らないし。見極めは難しいですね。

Q. お仕事の魅力やこれからのビジョンを教えてください。

神山:自分たちで企画して、製造までやって売るのは本当におもしろいと思っています。大事にしているのは、「ハンドメイドだけれども、クラフトではなくプロダクトである」こと。手づくりのものを量産する。工業製品なのだけれども、自分たちでできることを駆使して小さくつくる。手法としては決して新しいものではないけれど、プロダクトを世の中に出していくアプローチ方法としては新しい考え方なのかなあと思います。

「ガンガンつくって、ガンガン売って」という時代から、小さい組織でも小さいマーケットに、小さく売っていってもちゃんと稼いでいけるような時代に向かっていると思うんです。そういうことをおもしろがってみんなでやっているのが、うちの会社かなと。とにかく、できる限りみんなで内製したいんですね。プロダクトデザインや営業はもちろんやるし、それだけではなく、Web制作や売場づくり、展示会のブースづくりも自分たちでやりますね。

荷口:営業で入ってきたので、もちろん電ノコもドリルも使ったことがないし、それどころか雑貨のことも生産のこともデザインのこともまったく知識がなかったけれど、「楽しそう!やってみます!」みたいな(笑)。

神山:よくも悪くも新しいことばかりなので、好奇心旺盛な人だったら楽しい環境だと思います。

Q. ご自身のお仕事をほかの言葉で例えると?

神山:あえて言うなら「生活」かなあ……。生活=仕事っていうと、ブラック感がただようんですけど(笑)。ほんと、決して「プライベートを削って会社に奉仕しろ!」と言いたいわけじゃないんです。自分のなかでは、プライベートも仕事も、まとめて人生。どっちがよかったとか、どっちが犠牲になるとかではなくて。日用雑貨をつくっているという仕事でもあるので、やっぱり自分は生活ってものを意識しますよね。モノをつくっている生活っていうのがベースにあるというか。

杉浦:私は、自分の仕事を「ボランチ」かなと思っています。

神山:バランスを取る的な?かっこいい例えだなあ(笑)。でも、本当にそうだと思う。バランスを取るっていうのは、デザイナーとしてすごく重要なことだし。

杉浦:パスも出すし、守るし、指示も出すし。それで言うと、社長はキーパーかと。後ろから声を出してみんなを鼓舞する、みたいな感じです(笑)。

荷口:なんか、いいですね。その線で言うと、私はフォワードかな(笑)。

杉浦:確かに、営業って矢面に立つ仕事だからね。

荷口:矢面に立つと言うと、すごく大変そうに聞こえますが、1人で戦っているわけではないので。みんなでつくった商品が採用された時は本当に嬉しいですし、誇りを持てるポジションだと思っています。「絶対に負けられない戦いがそこにはある」ですからね(笑)。

(左から)代表取締役・神山友彦さん、チーフデザイナー・杉浦真樹子さん、営業・荷口沙由里さん、営業統括部長・太田一正さん

(左から)代表取締役・神山友彦さん、チーフデザイナー・杉浦真樹子さん、営業・荷口沙由里さん、営業統括部長・太田一正さん

PROFILE
株式会社ビッテ
2015年よりキッチンウェア、ステーショナリー、バスグッズなど、ジャンルにとらわれない生活雑貨ブランド「biite(ビッテ)」は、デザイン・製造・販売。営業も製造もデザイナーも垣根なく全員で話し、考え、自分たちも楽しめる商品を紡ぎ出している。
http://www.biite.co.jp/

神山友彦 代表取締役・デザイナー

1974年生まれ。家庭日用品メーカーの企画開発室勤務を経て、平成19年デザイナーとして独立。OEM製品の開発およびデザインなどをを手掛ける。平成27年自社にてデザイン、製造、販売を行うメーカー「biite」(株式会社ビッテ)を設立。

杉浦真樹子 チーフデザイナー

1980年生まれ。家庭日用品メーカーの企画開発室を6年ほど勤務。神山の元、主にOEM製品の開発を行う。退職後、「biite」の立ち上げから参加し、主に商品のデザイン、企画開発を行う。

荷口沙由里 営業

1986年生まれ。未経験ながら、「biite」の設立時から営業として活動。主に小売店や問屋との営業を行う。商品の企画開発にも関わり、売り場と開発の橋渡し役になっている。