公開日:2017/09/28
株式会社サイバーエージェント(以下、サイバーエージェント)では、ゲーム&エンターテイメント事業に携わる会社をすべて子会社にするという、ユニークなスタイルをとっているそうです。それらの子会社が集まった組織は、SGE(Smartphone Games & Entertainment)と呼ばれています。大ヒット創出を狙っていくために、各社の失敗例や成功例を共有したり、人と人とをつなげる交流、スキルアップを図る施策などを横軸で行っています。そのなかで、「Creators Clan(以下、クリエイターズクラン)」は、ゲーム事業に関わるクリエイターに特化した横断組織です。
クリエイターズクランの制作スタジオには、イラストレーターや漫画家、アートディレクターが集まり、さまざまなクリエイティブに触れながら集中して作業ができる環境が整っています。1Fのリラクゼーションスペースでは、横断的な交流を目的としたミートアップも活発で、毎回テーマを変えてLT形式でノウハウ共有もする交流会「SGEクリエイターの横軸天国~ヨコテン~」や、つながり強化を目的とした「クリエイターナイト」など、多い時には毎週のように行われています。社外向けのミートアップも実施しているそうです。
SGEのクリエイター向け横断施策を担当しているのが、クリエイターのボードメンバーによって結成された「CRE8(クリエイト)」です。組織全体での「機会創出の最大化」と「機会損失の最小化」を目的とし、子会社ごとの考え方や文化を尊重しつつ、グループ横断組織で行ったほうがよい施策を考え実施しているそうです。
今回の「クリエイティブなオフィス探訪」では、外から見ていると組織の全容が少しつかみづらいSGE、そして「CRE8」による新しい取り組みについて、クリエイターズクランの代表を務める竹田彰吾さんと、クリエイターズクランの幹部として組織を牽引する藤原大記さん、本企画にうってつけのおふたりにお話をうかがいました。
——まずはおふたりのお仕事について教えてください
竹田彰吾さん(以下、竹田):私の場合は役割が広いので何種類かあるんですけど、サイバーエージェントのゲームやエンターテイメント事業に携わる子会社が所属するSGEのクリエイターの統括をしているのと、その中の1社である「アプリボット」のチーフクリエイティブオフィサー(CCO)という役職に就いています。「アプリボット」は8期目で、ほぼ立ち上げ当初から在籍していたので、これまで会社のあらゆるフェイズで携わってきました。
SGEのCCOになったのは2年前くらいですが、以前から、SGEのクリエイター横断組織「Creators Clan(以下、クリエイターズクラン)」の代表もしています。SGEでクリエイター向けの施策を考えるのは、私だけではなくクリエイターのボードメンバー「CRE8」で考えています。
藤原大記さん(以下、藤原さん):私はずっと竹田の下で仕事をしてきて、いまは「アプリボット」のデザインセクションの統括をしているのと、あとは「クリエイターズクラン」の副代表を務めています。最近は「アプリボット」という会社を少し超えて、SGE事業部全体でクリエイティブの組織をつくっていくことにチャレンジしています。
——クリエイターズクランのオフィスは、竹田さんがプロデュースされたそうですが、どんな目的と用途を想定していましたか?
竹田:クリエイターが働きやすい環境づくりを目的とし、職種ごとに集中して作業ができる執務室をつくったり、作業だけでなく質の高いクリエイティブに常に触れられたり、自然と会話が生まれるリラクゼーションスペースをつくったりしています。作業効率を上げることと、アウトプットの質が上がるようなオフィスづくりを目指しています。リラクゼーションスペースは、社内外でのイベントができるように広いスペースを取っています。
藤原:ふだん私はここで働いてはいないんですけど、作業に集中できる広いデスク、本棚に資料が多く並んでいるところとか、クリエイター目線で見ても働きやすい場所だと思います。ここで働いているクリエイターは、よくリラクゼーションスペースなどでランチをしていたり、クリエイター同士の横のつながりもできやすく、みんな仲がいいですね。
——SGEの社風はどんなものでしょうか?
竹田:すごく概念的な言い方をすると“いい人”が多いです。優しいという意味ではなく、意識が高くて素直な人が多いのがサイバーエージェント全体の特徴なんです。それはSGEにも同じことが言えます。会社は“人”でできていると思うし、人材こそがこの会社の“宝”なので、そこは一番うまくいっていると思います。みんな前を向いて、高いところに向かって走っているので、そこにはすごい自信があるし、SGEの好きなところですね。
藤原:新卒からこの環境にいる私の目線になりますが、自分が挑戦したいことを、いろいろな側面からバックアップしてくれる文化が強いと感じています。私は入社後、アートディレクター、イラストレーター、UIデザイナー、プロデューサーなど、さまざまなセクションのポジションに挑戦をさせてもらい、最近はより大きな組織づくりやマネジメントにも挑戦させてもらっています。経験の少ないメンバーに機会を与え、責任を持たせてくれる組織的な器の大きさがあるので、かなりいろんな経験をさせてもらってありがたかったです。
フェイズごとに新しい段階を昇るので、考える規模がどんどん大きくなっていきますね。やればやるほど満足しなくなってくるというか(笑)。そういう成長をさせてもらった実感はあります。
竹田:SGEでは、若手の社員でも組織の中核になっていくことが多く、組織に大きく貢献したらチャンスがもらえる仕組みは、組織全体としても強い風土だと思います。組織を運営する側としても、若手が元気だと社内の雰囲気が活性化するし、代謝も上がり文化も強くなるので、粘り強い組織になるという実感があります。
——いま、SGEとして掲げている目標はどのようなものですか?
竹田:ゲーム市場でナンバー1を取るというのが大きな目標です。サイバーエージェント全体で言うと、いま2番手か3番手くらいの位置につけているので、ゲーム市場でナンバー1を取れるところまで持っていきたいと思っています。
ゲーム事業を統括している、サイバーエージェント取締役副社長の日高の思想でもあるのですが、SGEは“各社”と“全社”のバランスを大事にしていて、権限はなるべく各社や現場が持てるようにしています。基本的には、各社が決定権を持っているのですが、SGEという1つの組織として柔軟に動けるように、人材の育成やノウハウ共有など全社で実施したほうがいい施策に関しては、全社で実施し、徹底して無駄が出ないようにしています。
「チームのアウトプットを最大化にしていこう」ということを組織全体で目指しているので、いま取り組んでいる横断の施策を通して、活発にコミュニケーションをとりながら、横のつながりをつくっていくことを所属クリエイターたちもすごい意識していますね。
何年か前は、自分が担当したクリエイティブでたくさん賞をいただいていた時期があって、そういうことが成果だと感じていましたが、いまはそれも大事にしていますが、会社としてより良くなっていく、目標に向かって一つになっている状態をつくることも重要だと感じています。1年前くらいから、藤原にはアプリボットでデザインセクションを任せてきて、今度は、私の管轄ではないなかでクリエイティブ部門のトップを彼が担うことになりました。そういうチャレンジできるチャンスを手にできる環境づくりのほうに、大きな成果のようなものを感じますね。
藤原:私も数年前だったら、自分が担当しているプロジェクトのクリエイティブをうまくつくれて、自分自身を評価されることに対して成果を感じていましたが、いまは組織全体、そして仲間が大きな成果を出し、一緒に成長していけることにも、楽しさを感じるようになりました。
——横断の施策を進めるなかで、「CRE8」はどんな役割を担っているんですか?
竹田:基本的には週1で定例会議をしているのですが、この春にまた組織を変えて、ユニオン制を導入しました。アニメーション、シナリオ、3D、デザインやアートなどでユニオンを組み、各ユニオンの代表が集まって、いまのSGE全体の課題や、それぞれのクリエイティブの課題をどう解決するのか?ということを組織の状況にあわせた施策に落として、PDCAをまわしています。それを「CRE8」の定例会議で毎週すり合わせていきます。
あとは各セクションで専門的に話した方がいいこと、やるべきことを進めてもらっています。ここから半年~1年かけてユニオン制がワークすれば、より強い組織になっていくと考えています。
藤原:そもそも子会社の集まった組織というのが特殊だと思うんですけど、その特殊さの中で成熟してきた文化の“強さ”を感じています。ふつうだったら、ひとつの会社で経験できるプロジェクトの数は限られると思うのですが、それが子会社を横断することで、いろんなプロジェクトで出た課題やノウハウを共有できるので、自分たちのサービスに活かされていく仕組みになっていると思っています。
竹田:ノウハウの溜まるスピードは上がったと思いますね。各社が悩んでいたことが、より適切な人に相談できるようになったのと、さまざまなノウハウが各セクションのトップに集まるようになり、それを組織に再分配する仕組みができてきました。課題はもちろんありますが、いろんな形で議論しながら進めているという感じですね。ここからです!
——今後、どういう人と一緒に組織をつくっていきたいですか?
藤原:高い目標を持っていて、市場のトップを目指すというところに一緒に向き合っていける人と働きたいと思っています。クリエイター一個人としてだけではなく、組織として一緒に大きな挑戦をして成長していくのは、大変なこともありますがとても刺激的で楽しいので、興味がある方はぜひ!
竹田:いまの市場でナンバー1を目指すというところで言うと、「とりあえず○○○○になれればいいや……」と思っている人からは、なかなか成長を引き出せないと思うので、ナンバー1を目指していて執着心をめちゃくちゃ持っている人と、一緒にナンバー1を目指していきたいですね。いろんなクリエイターのパフォーマンスを引き出す“器”をずっとつくってきたので、それくらいの意気込みのある人たちを受け止める自信はあります。
ただ、自分の技術さえ極められればいいと思っている人だと、話し合いを重ねてチームでつくる意味はないですよね。“チームでものをつくっていく”ことに興味を持っているクリエイターは、これからもっと活躍できると私は思っているので、その思想は重要視しています。ユーザーの方から評価をいただいてサービスが運用できるし、会社自体も運営できるので、そこをちゃんと腹落ちするまで理解して、チームを通してサービスをつくれるかどうかが大事ですね。それがすぐにはできなかったとしても、その2軸こそが大事だと思っています。
クリエイターズクランにお邪魔して感じたのは、作業に集中できる環境と、リラックスできる環境、その両方がバランス良くひとつの空間に交わっているなということです。それ以上に、新しいことに挑戦していく人を後押しをする企業風土、そしてナンバー1を目指すんだという意志をおふたりの話から感じました。子会社が横断的な施策を実行する「SGE」という組織の、ユニークさと強さの一端が見えた気がします!
SGE(Smartphone Games & Entertainment)
https://creator.game.cyberagent.co.jp/