公開日:2024/01/31
複合機や精密機器を主軸に事業を多角化しているコニカミノルタジャパン株式会社。そんな同社が精力的に「空間デザイン事業」を手がけていることをご存じでしょうか?
2018年に設立された空間デザイン統括部は、オフィスの空間デザインはもちろん、業務効率化や働き方改革までトータルに提案し、顧客の課題を解決する部署。外部への提案だけでなく、自社オフィスのデザインや働き方改革など社内向けの取り組みも担当しています。
今回、同社の空間デザイン統括部から、デザイングループリーダーの梅田眞世さんとデザイナーの辻仁実さんに、同社の空間デザイナーならではのやりがいや得られる経験などについてお話しいただきました。
——まずお二人の入社の経緯を教えてください。
梅田眞世さん(以下、梅田):前職ではオフィスデザインを中心に手がける設計事務所に勤めていました。「デザイナーとしていまよりももっと挑戦の幅を広げたい」という想いが強まり、転職活動をはじめました。
そんななか、リクルーターからの紹介で、コニカミノルタジャパンが空間デザイン事業をおこなっていることを知りました。オフィス空間やITツール、働き方のコンサルティングなど、製品カテゴリに縛られず、お客様の課題を解決していることを知り、ここなら前職で培ったスキルや知識を活かしながら多面的な提案ができ、自分にとって新しい視点を身につけられる環境だと感じ、入社を決意しました。
辻仁実さん(以下、辻):私は前職では空間デザインとは異なる仕事をしていました。しかし、学生時代に学んでいた空間デザイン分野に携わりたい想いが募り、第二新卒として就職活動を開始しました。
コニカミノルタジャパンが空間事業を手がけていることを知ったのは、新卒として就活をしていた時です。当時から細部までこだわりの詰まったオフィスがとても印象に残っていて、私にとって忘れられない会社の一つでした。
入社の決め手は、事業の幅広さ。空間デザインだけでなく、オフィスのペーパーレス化など働き方の側面からもアプローチする機会も多く、成長環境としてぴったりだと思いました。また、空間デザイン統括部はお客様だけでなく、自社のオフィス環境づくりも担当しているため、自分の働く環境をデザインできることにも魅力を感じました。
——お二人が所属する空間デザイン統括部は、2021年に「つなぐオフィス」プロジェクトに積極的に関わったとお聞きしました。 どのような経緯で本プロジェクトがはじまったのでしょうか?
梅田:コニカミノルタジャパンでは、コロナ禍以前から積極的に働き方改革に取り組んでいました。フリーアドレスもいち早く導入しましたが、働き方の多様化を実現するには席を自由にするだけでは十分ではないのではと、社内で議論が生まれたんです。
そこで、2020年からABWの考え方を社内に浸透させていく取り組みをスタート。その時々の仕事内容に合わせて、自宅やカフェなど働く場所を自由に選択して働けるように仕組みをつくっていきました。そんななかで突入したコロナ禍。ABWに基づいた働き方を導入していたため、フルリモートワークへの移行はスムーズでした。
梅田:問題は、コロナ禍が明けてからどうするのか。「働く場所が自由に選べるなかで、オフィスは社員にとってどのような存在であるべきなのだろう?」―その問いの答えを出すべく、経営企画部や総務部、空間デザイン統括部など、さまざまな事業部のメンバーが集まって「つなぐオフィス委員会」を発足。それぞれがこの会社にとって必要なオフィスとはなにか意見を出し合い、最終的にオフィスに必要な要素を3つに集約しました。
社員のエンゲージメントを高める場、生産性を高める場、そしてコラボレーションで発想を生む場。この3つを叶えられるオフィスの実現に向け、私たち空間デザイン統括部が具体化していきました。
梅田:こうして完成したのが、7つのエリアに分かれたアジャイル型のオフィスです。集中して業務をおこなう「High Focus」、議論を弾ませる「High Collaboration」、創造性を高める「High Creativity」などのエリアに分け、構成しています。資料づくりに集中したい時、チームメンバーとコミュニケーションを取りたい時、アイデアをたくさん出したい時と、用途に合わせて働く場所を社内で選択できる環境を整えました。
——辻さんは「つなぐオフィス」完成後に入社されていますが、最初にオフィスを見た時はどのように感じましたか?
辻:私がイメージしていたオフィス像とまったく違っていて、とても驚きました。就職活動でいろんな企業を訪問する機会がありましたが、社員が一番のびのびと働いているように感じ、率直に「ここでなら長く働けるかも…」と思いました。実際に「つなぐオフィス」で働くようになり、作業場所が自由に選択できることで気分転換を図れるのは、とてもありがたいです。
梅田:そう言ってもらえて私も嬉しいです。コロナ禍でなにが正解かわからないなかでつくったオフィスだったので、社員のみんなから好評の声をもらえた時はホッとしましたね。ただ、新しいオフィスの使い方に戸惑う声も聞かれました。
梅田:たとえば、フロアの真ん中にあるコラボレーションスペースは、「どのエリアからも目線に入るオープンな空間で利用しづらい」と利用率がいまいちでした。「つなぐオフィス」は実証実験を前提としたオフィスなので、そういったネガティブな意見も参考にしながら、改良に改良を重ねていきました。リニューアルから2年経ったいま、社員それぞれが自分なりの使い方を見出しながら働いているのを見て、やった甲斐があったなと感じています。
――「つなぐオフィス」をつくったことで、お客様への提案も変化したのでしょうか?
梅田:これまでもABWの考え方を導入したオフィス提案をおこなってきましたが、「つなぐオフィス」をつくったことでさらに説得力が増した提案ができるようになったと感じます。
たとえば、農業向け機械メーカーのクボタ様の場合。働き方の多様化に合わせてフリーアドレスを導入したものの、社内にうまく浸透しないことに悩んでいました。そこでABWの考え方を採用した当社の「つなぐオフィス」に訪問いただき、クボタ様にとって最適なオフィスとはなにかを一緒に考えていきました。
梅田:リニューアル後の執務フロアは、固定席を廃した「フリーアドレスエリア」、ミーティングをおこないやすいようにテーブル席で構成された「コラボレーションエリア」、ソファに掛けてリラックスしながら打ち合わせができる「クリエイティブエリア」、作業に集中できる「フォーカスエリア」で構成。各エリアである程度用途が決まっているので、働く場所をより選択しやすくしました。
また、ランチタイムしか利用されていなかった食堂をカフェテリアにリニューアル。業務時間中にもワークスペースとして気軽に使えるような仕組みにすることで、働く場所の選択肢を増やすことができました。
——コニカミノルタジャパンで働く中で感じるやりがいや魅力について教えてください。
梅田:「つなぐオフィス」で実際に働くことで、働く環境に必要なものとはなにか、経験的に理解できる。そこにコニカミノルタジャパンで空間デザイナーとして働く強みがあると考えています。つまり、出社することがそのまま空間デザインの勉強になるんです。自分が働くなかで、改善すべきところを見つけ、形にし、働く社員からフィードバックをもらう。自分たちのオフィスで実証実験をしながら、働きやすい空間を追求できる環境だと思います。
また、当社は毎日のように「オフィスツアー」を開催しており、お客様と対話できる機会が多いことも特徴です。デザイナーが営業に同行し、お客様のリアルな声を直接拾い上げることで、お客様が普段どんなところで課題を感じているのか、多くの気づきを得られます。
辻:私にとって「つなぐオフィス」は、まさしく学びの場です。自分では良いデザインだと思っていても、他部署の人にとっては使いづらく感じたり、その逆もあったり。実際に働いている人の声をすぐにキャッチアップできる環境なので、いろいろな視点を持つことができます。
辻:ほかにも、空間デザイン分野にとどまらず複合的な提案ができることも、弊社でデザイナーをやる魅力だと思います。たとえば、フロアの中心にオープンスペースをつくる提案をしようとした時、設計図を書いてみると、オープンスペースとコンセントの位置が離れており、気軽に充電できないことに気がつきました。デザイナーのみの組織だと、この場合レイアウトを変更しなければなりません。
しかし弊社はモバイルバッテリーを自社販売しているので、レイアウトそのままにモバイルバッテリーと合わせた提案ができる。ほかの事業部と連携することで、質の高いデザインが可能になるんです。そのため、デザインを考える時は、コニカミノルタジャパンのリソースをフルに使ってなにができるかを意識するようにしています。
梅田:社内向けの空間デザインの観点で言うと、当社は「オフィスを全員でつくっていこう」という前向きな風土が根づいているため、デザイナーが社内を巻き込みやすい環境です。空間デザイン統括部のメンバーが会社のために取り組みたいことがあれば、「つなぐオフィス委員会」に提案できます。 実際に「つなぐオフィス」を進める際も、経営メンバーと直接話し合いながら形にしていきました。この規模の会社で、自分たちのやりたいことを社内に発信して具体化できるのは、とてもやりがいを感じますね。
——最後に、空間デザイナーとしての今後の展望について教えてください。
辻:まだ入社して日が浅いので、いまはとにかく目の前のことに全力で取り組み、経験や知識を確実に自分のものにしていきたいです。そしてゆくゆくは、オフィスだけでなくどんな施設でも設計できるデザイナーになりたいと考えています。
ここ数年で世の中のオフィスに対する考え方や働き方が大きく変化しました。多くの人々がオフィスや自宅を使い分けながら働くようになりましたが、将来的にはオフィスがいらなくなり、オフィスに代わる新しい場所が必要になるかもしれない。そんなことを想像すると、オフィス以外にもデザインの幅を広げていく必要性があると思います。だからこそ、オフィスに限らず「働く」の本質を探りながら、新しいデザインを提案できるようになりたいですね。
梅田:コロナ禍を経て働き方が大きく変化した昨今、ただオシャレなだけのオフィスではお客様のニーズに応えるのは難しいと感じるようになりました。一番大事なのは、働く人の目線で空間をデザインすること。オフィスにどんなことを求めて、どんなふうに働きたいのかを、きちんと読み解く力が空間デザイナーに求められる時代です。自分たちがデザインしたオフィスで実際に働くことができる当部署は、まさにいま求められるデザインスキルが磨ける場所だと思います。
デザイングループのメンバーたちにも、お客様の真のニーズを読み解く力を磨いてもらうために、空間デザイン以外の視点をたくさん持ってほしいです。コニカミノルタジャパンは、さまざまな事業部が集まった会社。空間デザイナーとして成長できる機会が豊富にあるので、それを最大限に活かせる環境をリーダーとして整えていきたいですね。
デザイングループがレベルアップすることは、お客様の課題に応えられる幅が広がるということ。オフィス空間を通して、お客様の企業価値の向上を叶える部署に成長していきたいと思います。
コニカミノルタジャパン株式会社 空間デザイン統括部
https://www.konicaminolta.jp/business/solution/space-design/
コニカミノルタジャパン株式会社 マーケティングサービス事業部 空間デザイン統括部 技術部 デザイングループ リーダー デザイナー
コニカミノルタジャパン株式会社 マーケティングサービス事業部 空間デザイン統括部 技術部 デザイングループ デザイナー