
公開日:2025/02/12
現在、世界63の国・地域で展開するスウェーデン発祥のホームファニッシングカンパニー、イケア。1943年の創業当時はペンや時計など多様な商品を取り扱っていたが、家具の自社デザインを開始するにあたり、梱包や配送の効率化を追求し、1956年にフラットパックが誕生。組み立て家具の製造・販売という独自のビジネスモデルを確立した。
優れたデザインと機能を備えたホームファニッシング製品を手ごろな価格で提供し、より快適な毎日をより多くの人々に届けることを理念に掲げ、世界中で多くの支持を得ている同社。日本には2006年、IKEA Tokyo-Bay(千葉県船橋市)のオープンを皮切りに進出。現在は、全国に15店舗とIKEAオンラインストアやIKEAアプリを展開している。
今回は、イケアの店舗空間を彩るコミュニケーション&インテリアデザイン部門の二つの仕事にフィーチャーすべく、IKEA Tokyo-BayのVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の刈谷仁美さんとインテリアデザイナーの山内弓子さんにお話をうかがった。
——まず、お二人の入社のきっかけを教えてください。
刈谷仁美さん(以下、刈谷):大学時代に建築を学び、卒業後も建築事務所で働いていました。ただ、専攻がインテリアだったので、やはりインテリアに携わる仕事がしたいという思いが募り、転職活動をはじめました。新卒の就職活動の時にもイケアの求人を見つけていたのですが、その時は自信がなかったので諦めてしまって。転職活動の時に再度イケアの求人を見て、思い切って応募しました。
刈谷仁美さん(VMD)
山内弓子さん(以下、山内):私は大学卒業後、住宅メーカーに入社しました。事務職ではありましたが、10年間勤めた中でインテリアに興味を持ちました。その後、子育てが本格化したのを機に退職し、約2年間は専業主婦として過ごしていましたが、家でじっとしているのは性に合わなくて(笑)。子育てがひと段落したら家に関わる仕事に就きたいと思い、専門学校で2年間、インテリアについて学びました。
卒業後は住宅メーカーのインテリア部署での勤務も検討しましたが、住宅メーカーの多くが火曜日と水曜日を休日としていたため、小学生の子どもがいる私には合わないと感じていました。そんな矢先、イケアの当時の求人情報を見つけ、店舗デザイン部門では基本的に土日休みを採用していることを知り、応募を決めました。
山内弓子さん(インテリアデザイナー)
——VMD、インテリアデザイナーという仕事を選んだ理由は何ですか?
刈谷(VMD):最初は、「部屋をつくる」ことに興味があったので、インテリアデザイナーとして入社しました。仕事をする中で「店舗づくり」へ興味が移っていき、社内公募制度を利用してVMDへキャリアチェンジすることにしました。いまでは店舗全体の構成やレイアウトにやりがいを感じています。
山内(インテリアデザイナー):私は「家が好き」という思いが強くあったので、インテリアデザイナー一筋でした。イケアのショールームは「本当の家のように、使い勝手よく」というテーマでつくられていて、「まさにこういう仕事がしたい!」と考えていたんです。
——VMDという仕事はあまり馴染みがないかもしれません。具体的に、どのような業務をされているのでしょうか?
刈谷(VMD):一言で言うと、売れるためのディスプレイを考える仕事です。お客さまにお買い物のインスピレーションを与え、商品を手に取ってもらいやすくすることがミッションです。具体的には、店舗全体の内装、什器のレイアウト、そしてお客さまが回遊しやすい動線づくりが基本業務になります。
VMDのお仕事の様子。ライティングなどを調整し、商品をより魅力的に見せている
刈谷(VMD):特に重要なのは、初来店のお客さまでも迷わず店内を見て回れる店舗づくりです。やはり同じ店舗で長く働いていると、私自身はどこにどの商品があるかを把握しているので、お客さま目線を忘れてしまうんです。いつも新鮮な目で店舗を見るよう心がけています。
——VMDと比較して、イケアのインテリアデザイナーはどのようなお仕事ですか?
山内(インテリアデザイナー):インテリアデザイナーは、お客さまの暮らしにヒントを与える仕事です。お客さまの生活にイケアの商品をどのように取り入れるかを提案する役割とも言えます。具体的には、ショールーム全体の内装、レストラン、授乳室、トイレなど、建築に関わる部分のプランニングをおこなうのが主な業務です。
インテリアデザイナーのお仕事の様子。店舗内のルームセットに飾る商品をきれいに整えている
山内(インテリアデザイナー):IKEA Tokyo-Bayには約50個のルームセットがあります。それぞれの部屋には、そこに暮らす住人のペルソナを細かく設定しており、お客さまが自身のライフスタイルに合った内装を見つけやすくなるようにしています。
山内さんが手がけたルームセット
——VMDとインテリアデザイナーとして、会社から求められているのは何だと思いますか?また、心がけていることはありますか?
刈谷(VMD):一見当たり前かもしれませんが、「自分の考えを伝える」ことが求められていると感じます。イケアは多様性を大切にする企業なので、ミーティングでもさまざまな意見が飛び交います。私も積極的にアイデアを提案することで、チームにはいくつもの選択肢が生まれ、その結果、店舗はさらに魅力的な空間へと進化していきます。正解が一つではないからこそ、多彩なアイデアが期待されているのだと思います。
アイデアの引き出しを増やすため、ショッピングモールや商業施設を訪問する際は、以前よりディスプレイやレイアウトを意識して観察するようにしています。また、Webサイトやソーシャルメディアで参考になる画像を見つけた際も、アイデアとしてストックしていますね。
オフィスに吊るされていた店舗図面。ここでアイデアを出し合っている
山内(インテリアデザイナー):インテリアデザイナーに求められるのは、お客さまに楽しく見ていただけるお部屋づくりです。イケアへの来店が楽しい思い出として記憶に残り、購入の有無を問わず何度でも足を運びたくなるような「楽しいお部屋」をつくり、長く愛される店舗を目指しています。
部屋づくりをするうえでは、国内のインテリアトレンドの情報収集は欠かせません。特にイケアではスウェーデンから届くトレンド情報を受け取り、それを地域に根差したお部屋づくりに落とし込む工夫が求められます。
さらに、インテリアはただ飾るだけではなく、そこに意味を持たせることが大切です。そのため、整理収納の知識や「ここにこれがあると使いやすい」といった実用性を考慮した空間づくりのスキルも必須です。これらを意識しながら、日々多くの事例を見てインスピレーションを得る努力を続けています。
——VMDとインテリアデザイナーの魅力はどのようなところですか?
刈谷(VMD):VMDの仕事というのは、お客さまの購買意欲に直結するため、売上として数値化されるんです。なので、商品責任者から「売上が上がった」「タッチ率がアップした」「お客さまが足を止めくれた」と報告を受けると、モチベーションにつながりますね。
山内(インテリアデザイナー):VMDとは異なり、インテリアデザイナーの仕事は数値化が難しいと言われています。お客さまがショールームを回遊しているため、売上が伸びた理由を特定することができないからです。そのため、自分が手がけた部屋にお客さまが入っているか、商品を手に取っているかを実際に観察して、仕事の成果を確認することもありますね。また、コンセプトに沿ったお部屋が完成し、長期間ショールームに展示される時は、大きな達成感を感じます。
——イケアで働く魅力について教えてください。
刈谷(VMD):イケア全体で取り組んでいるサステナビリティへの意識が、働く中で自然と身につくことです。特別な研修を受けているわけではありませんが、サステナブルな素材として使用できるものがルール化されているので、「なぜそれが使えるのか」または「なぜ使えないのか」を考えるきっかけになり、サステナブルな考え方が自然と染み込んでいく感覚がありますね。
山内(インテリアデザイナー):私はダイバーシティの面で大きな価値を感じています。イケアは本当に多様性を大切にしていて、どんな背景を持った人でもオープンに受け入れる文化があります。それが社内に浸透しているのは素晴らしいことです。また、環境に配慮した取り組みも随所に見られます。トイレの水の再利用や電力の再生可能エネルギー化など、実際に働く環境でそうした取り組みが体感できるのもイケアならではですね。
刈谷(VMD):ビュッフェ形式の社員食堂では、食べ残しの量が具体的な数値で表示されます。「今日は食べ残しが多い」と気付くと、お皿に取る量を意識するので、無駄を減らす行動が自然に身につきますね。
社員食堂に掲示されている食品ロスの量
山内(インテリアデザイナー):「ただ言っているだけ」ではなく、取り組みが実際に働く環境に反映されているのがイケアの大きな特徴です。それが後付けではなく、しっかりと考え抜かれて実践している点に、とても共感しています。
——ワークライフバランスはいかがですか?
刈谷(VMD):イケアの魅力の一つは、ワークライフバランスがとても充実している点です。海外の方は家族を第一に考える方が多いようで、その文化がイケアにも深く根付いていると感じます。子どもが生まれたり、介護の心配が出てきたりしても、会社に遠慮なく相談できる環境が整っています。
山内(インテリアデザイナー):有休日数が多く、取得も推奨されていますよね。以前、住宅メーカーで働いていた際は、子どもが熱を出して休むことや、友人の結婚式に出席するために土日を休むことに気を遣うことが多々ありました。イケアでは、「プライベートを優先してね」という雰囲気があり、ミーティングが入っていても気兼ねなく休むことができます。
刈谷(VMD):休みが明けて出社したら、もちろん仕事は山積みなんですよ(笑)。でも、休みが確保できる安心感があるので、次の休みまで頑張る気持ちで仕事にも全力で取り組めるんです。
山内(インテリアデザイナー):それから、残業がほぼゼロであることもぜひアピールしたいですね!残業をしないと仕事がたまってしまいそうに思われるかもしれませんが、基本的にはマネージャーがチームメンバーにうまく仕事を振り分けてくれるので、一人に負担がかかることはありません。そのおかげで、全員が終業時間になるとスムーズに帰宅でき、疲れをためずに翌日また集中して働けるんです。
刈谷(VMD):勤務時間内にいかに効率よく業務を終わらせるか、を考えるようにもなりましたしね。
——この仕事に向いているのはどのような人だと思いますか?
刈谷(VMD):インテリアが好きな人はもちろんですが、社内にはさまざまな意見を持つ人がいるので、自分とは異なる考えを持つ人たちとも積極的にコミュニケーションを取れる人が向いていると思います。私自身も実際にイケアで働いてみて、コミュニケーション能力の重要性を痛感しているので。
山内(インテリアデザイナー):私もインテリアに興味を持っている人なら向いていると思います。自分の考えをデザインに反映できるので、ものづくりが好きな人や、「これが好き!」というこだわりを持っている人にも相性がいいと思いますね。
——コミュニケーション&インテリアデザイン部門のメンバーはどのような人がいて、どのような人材が求められているのでしょうか?
山内(インテリアデザイナー):募集要項では、デザイン関連の学校を卒業している、もしくは前職でその経験がある人が条件となっています。ただ、入社後は、ポジションに空きが出た場合には社内公募が実施され、その制度を利用して他部署へ異動する機会があります。私たちが所属するコミュニケーション&インテリアデザイン部門は人数も限られているので条件やタイミングにもよりますが、社内公募で異動してきた人もいます。
刈谷(VMD):現在所属しているメンバーは、建築やデザインのバックグラウンドを持った人ばかりなので、それらの知識は必要だと思います。
山内(インテリアデザイナー):それから、英語も必須ですね。イケアでは、採用プロセスのどこかで必ず英語の面接が実施されます。当時、私は英語がまったくわからなかったのですが、頑張って準備して面接に臨みました。
IKEA Tokyo-Bayは現在、ほとんどの方が日本語でコミュニケーションをとっていますが、イケアでは基本的に英語が公用語のため、英語でのミーティングが多くあります。集中力が切れると、途端に聞き取れなくなることもありましたね(笑)。
刈谷(VMD):資料も英語で書かれているため、最初は理解に手こずり苛立つこともありました。でも、英語は努力と気合い次第でどうにかなると思います。スタッフは優しい人ばかりなので、単語を並べただけの会話でも理解しようと努めてくれます。流暢に話す必要はまったくありません!
コミュニケーション&インテリアデザイン部門のみなさん
刈谷(VMD):先ほど山内さんも言っていましたが、「好きなことがある人」と一緒に働きたいですね。好きなことがあるとそれがその人のキャラクターや魅力的な部分になるので、一緒に仕事をしていて楽しいと感じます。逆に、「自分には何もないな…」って思っていても、聞き上手な人が多くて「そこがあなたの魅力ポイントね」と気づかせてもらえることもあります。お互いの個性を尊重し合い、刺激し合える職場ですね。
——最後に、お二人の今後の展望をお聞かせください。
山内(インテリアデザイナー):自分がつくったショールームやレストランをお客さまが楽しみながら回遊してくださるのを見るのがなにより嬉しいので、これからもインテリアデザインの知識を深め、より自信を持って提案できる空間をつくっていきたいと思います。
刈谷(VMD):私も仕事をするほど「もっと知りたい」「もっと良い店舗づくりに活かしたい」と感じることが増え、学び続ける意欲が湧いています。これからもVMDとしての知識を蓄えながら、店舗の売上やお客さまの満足度に貢献できる空間をつくり続けたいです。
VMDの魅力は、自分が手がけたものが目に見える形で店舗の空間に反映され、それが売上やお客さまの反応として実感できるところです。数字を追うことが好きな方には、特にやりがいのある仕事だと思いますので、ぜひ挑戦してみてください!
【募集要項】
世界最大のホームファニッシング会社であなたの創造力を形にしてみませんか?
2021年3月入社。大学の建築学科を卒業後、設計事務所での勤務を経てイケア・ジャパンに入社。現在はVMDとして、ショールーム・マーケットホールのディスプレイを担当。
2021年入社。大学卒業後に住宅メーカーに勤務を経てイケア・ジャパンに入社。現在はインテリアデザイナーとしてショールームづくりを担当。