
公開日:2025/10/01
「インナーブランディングファースト」の精神で独自のノウハウを活かし、大手企業の課題解決へのアプローチを図るglassy株式会社(以下、glassy)。そのサービスは社内報の制作からWeb媒体の作成、企業内イベントのプロデュースまで多岐にわたる。
そんな同社の魅力や大切にする企業理念、これから入社するクリエイターに求めることなど、代表でクリエイティブディレクターの工藤太一さんにお話をうかがった。
――工藤さんの簡単な経歴からお聞かせください。
もともと私は、今年で58期目を迎える印刷会社・株式会社明祥(以下、明祥)の2代目で、家業を継ぐ前は、別の印刷会社に営業職として4年ほど勤めていました。明祥に入社後、2012年に父の後を継いで社長になり、2017年にglassyを設立しました。
工藤太一さん
――御社の具体的な業務内容を教えてください。
おもに3つの柱で事業を展開しています。1つ目は「コーポレート・ブランディング事業」といって、大手企業向けの広報支援サービスです。社内報をはじめ、社員向けの研修資料や映像制作など、いわゆる社内向けの広報ツールを制作するのがおもな業務です。
2つ目が、社内コミュニケーションツール(デジタル社内報)を開発・提供する「コミュニケーションTech事業」です。テクノロジーの進化で、年々デジタルの比重が高まっていますよね。弊社では2013年に紙の社内報のサービスをはじめたのですが、早々にデジタルのシェアも見据え、2016年から自社でプログラム開発をおこなってきました。
3つ目が、「イベントプロデュース事業」です。以前から、企業の周年イベントや表彰式などを取材して社内報で取り上げていたのですが、自分たちでイベントを企画提案できた方がいいと考え、2022年にglassyイベントワークスという会社を立ち上げました。製品プロモーションなどではなく、あくまで社内のコミュニケーションに特化したものだけを取り扱っています。
最近はリモートで仕事ができる環境も整ってきた一方で、リアルでのコミュニケーションを強化したいという企業も増え、ありがたいことに立ち上げ当初から反響をいただいています。
glassyが運営する社内報制作サービスサイト
また、2019年からは「インナーブランディングの達人になる」というビジョンを掲げています。長らく紙の社内報を制作してきたノウハウを活かし、そこからもう一歩踏み込んだところでできることを再定義しました。
近年、インナーブランディングは組織経営において重要なキーワードですが、組織づくりに悩む経営者は少なくありません。私たちは「インナーブランディングファースト」という考え方を持っていて、企業ブランディングを考える上で、やはり内側からはじめる以外にはないと考えています。
それを踏まえた上で、企業の抱える課題や実現したいビジョンを明確化し、ありたい姿へと導くサポートができればと考えました。現在は紙の社内報制作にとどまらず、インナーブランディングを起点とした多岐にわたるサービスをおこなっています。
――社内報制作を軸としていますが、なぜ社内報に注目したのでしょうか?
少し遡りますが、もともとglassyの前身となる、株式会社アドテイスト(以下、アドテイスト)という会社が1996年からありました。アドテイストは、明祥の制作部門としてできた会社です。
ただ、当時は販促の仕事が多かったので、どうしても季節や景気によって売上に影響が出てしまっていました。さらに私が明祥に入った頃は、印刷業界の仕事が激減していたタイミングでもありました。会社の将来を考えたときに、印刷だけではない、もっと制作まで絡めた安定的なサービスを生み出す必要があると考えたんです。
そのときに目を向けたのが社内報でした。社内報は毎月発行する企業もあれば、半年や3ヵ月に1回という企業もありますが、定期的な受注が見込めます。制作スタッフのデザイン力もそれなりにあったので、その点も活かして提案できるのではないかと思いました。
社内報の仕事が徐々に増えてきた頃、明祥の社内報事業をアドテイストの方に1本化しました。印刷会社として受けるよりも、社内報制作というビジョンを明確に打ち出した方が、お客さまも発注しやすいだろうと考えたからです。
2017年に販促などの仕事を担当しているスタッフは明祥に転籍し、アドテイストには社内報を制作するスタッフだけが残りました。そのタイミングでglassyという社名に変更しました。
――サービスを提供する上で、glassyの強みはどんなところでしょうか?
私たちは、企業にとって価値のある媒体をつくることを何より大切にしています。社内報は費用対効果が計りづらい分、「誰も読んでいないのでは?」や「そもそもつくる意味があるの?」と、軽く見られがちな部分があると思うんです。
でも、課題解決やブランディングのための1つのプロセスとして、社内報が重要な位置付けであることを論理的に経営陣や社員に説明できることって大事です。私たちは社内報を、「社内における唯一のオフィシャルな冊子」と定義しています。
だからこそお客さまからいただいた原稿を単にまとめ直すのではなく、会社の歴史や社長の考え、抱えている課題や目指すべきビジョンなどを細かく把握した上で、広報やIR担当者ととことん協議して企画に落とし込んでいます。
企業が進みたい方向性を伝えるためには、どんな企画や切り口、テンションでデザインや文章を紡いでいくと社員に刺さるのか、という視点を持つことが重要です。だからこそすべての企画や記事には意図があり、説明できないものは1つもないんです。もちろん私たちも完璧ではありませんが、少なくともお客さまにとって意味のある媒体をつくっているという自信はあります。
――社内報制作にはどんな職種があり、どのようなチーム体制でお仕事されているのですか?
コーポレート・ブランディング事業には、営業・ディレクター、編集・ライター、デザイナーの3つの職種があります。特徴的なのは、機能別の組織にしていないところです。通常だと営業・ディレクター、編集・ライター、デザイナーという職種ごとにチーム分けされていて、それぞれのマネージャーが仕事の振り分けなどをおこなっていると思います。
弊社では、1つのチームに各職種のスタッフが在籍し、チームごとに固定のクライアントを受け持つようにしています。1チームあたりだいたい12名前後で、それが複数ある形ですね。
社内の打ち合わせ風景
――なぜそのような体制にしているのでしょうか?
10年ほど前までは機能別の組織にしていましたが、それだと力が束にならないというか、いまいちオーナーシップを発揮しづらかったんですよね。でも、チームごとに担当クライアントを受け持つようにすると、デザイナーや編集も取引先に対する顧客意識が芽生え、クライアントのことを積極的に理解するようになったんです。
さらに、チームで数値目標を持っています。そのチームにクライアントから新しい案件が入ってくれば、チーム内で創意工夫しながらアイデアを出し合い、いかにチームの業績を上げていくかを一人ひとりが考えるようになりました。
以前の体制の時は同じゴールを目指すための議論や協力がしづらかったり、自分がやったことが何に繋がっているのかがわかりづらかったように思います。体制を変えたことで、それぞれが働きにくかった部分が明確になったと思います。
――最近ではクリエイターに向けたお金の本なども出ていますが、クリエイターの方々の数字に対する意識も自ずと高くなりそうですね。
そのあたりの意識は、確かに身に付くかもしれません。そもそもクリエイターに受注単価を知らせるかどうかは議論のあるところで、教えない会社も多いです。一側面としてそれも正しいと思う一方で、どんな壮大なビジョンも緻密な戦略も、結局経済的に成り立たなければ終わってしまいます。ましてや弊社のように新しいサービスを立ち上げた会社なら、なおさら稼がないと先がありません。
そのときに、みんながバラバラの方向性で仕事をしていたら成果が出づらいので、社内で共通の物差しをつくったんです。それが“粗利”です。「理想とする給与をもらうためには、年間1人あたりこのくらいの粗利を出す必要がある」ということを、私は社内報のサービスをはじめた頃からクリエイターに口を酸っぱくして言ってきました。結果、みんなお金に対する意識が高くなったと思います。
――そんなクリエイターのみなさんは、どんなバックグラウンドを持った方々が多いですか?
年齢層でいうと、1番多いのが20代で、次に30代、その次が40代・50代です。20代はほとんど新卒です。反対に40代・50代はほぼ中途採用で、かつ社内報の立ち上げメンバーが在籍しています。glassyに入る前は広告業界で働いていた人や、制作プロダクションで雑誌の編集、エディトリアルデザインに携わっていたメンバーが多いですね。
社内の様子
――御社には、どんな人が向いていると思いますか?
社内の体制からもわかるように、チームで働くことをかなり求められる環境です。だから大前提として、「みんなで働くのが好き」という人がうちの会社には合いやすいと思います。
チーム全体のタスクを個人に分解して任せているので、自分の仕事をしっかり終えるという視点に加え、チーム全体でその日の重要タスクを終えているかという視点も必要です。もちろん、全員の仕事が終わるまで帰れないということはないです。でも、もし手一杯のスタッフがいたときに、自然にフォローに入るなどの対応がスムーズにできる人の方が望ましいですね。
――これから入社してくるクリエイターに、求めることや期待することはどんなことですか?
弊社では、例えばデザインができる人をクリエイターと呼ぶのではなく、会社のスタッフ全員がクリエイターという位置付けです。私たちの文脈でいうクリエイターは、「お客さまの課題に何らかの形で利益を与えられる人」です。
もちろん、自分がつくりたいものをつくることも大事ですが、その手前でお客さまが求めるものをしっかり把握して、そこに自身のクリエイターとしての資質をうまくミックスしてほしいと思っています。
オフィスのカウンタースペース。集中したい時や、軽い打ち合わせにも使用できる
――御社に入社することで得られる成長ややりがいは、どのような部分でしょうか。
社内報であれば、一定量担当することになるので、エディトリアルの制作におけるスキルはしっかり身に付くと思います。加えて、クライアントとなる多様な企業のことをそれなりに深く知っていくので、その蓄積によって社会の構成要素がなんとなく見えるようになるというか、他社のクリエイターに比べてビジネスや経済、産業の分野に強くなれるのではないでしょうか。
そうした世の中の情勢を知った上で制作するのと知らないで制作するのとでは、プロセスとしてかなり違ってきます。技術+αのスキルアップが見込める点も、弊社ならではのメリットだと思います。
――会社として今後目指していくことや、展望をお聞かせください。
これまではあえて「社内報の専門」という打ち出し方をしてきましたが、今後はさらにマーケットを広げて、「コーポレートブランディングができる会社」という要素を、より色濃く打ち出していきたいと考えています。
社内報の制作は一部上場クラスのお客さまが多いのですが、我々が大切にしてきたインナーブランディングファーストの考え方やその過程でのディレクション手法が、中小企業の第二創業やリブランディングの場面にもうまく応用できるのではないかと思います。今後は、大企業向けの広報支援サービスに加え、中小企業向けのリブランディング支援サービスといった両軸での展開を見据えています。
社内報の制作はどうしても手応えを感じづらいですが、中小企業のリブランディングは一大イベントなので、クリエイティブに対するインパクトもかなり大きいんですよね。どちらがいいというわけではありませんが、クリエイターとしての手応えもおそらく質の違うものになってくると思います。
スタッフにはいろんな仕事を経験してほしいですし、自己実現ということを考えたときに、やっぱり会社の中に成長の機会がたくさんある方がいいですよね。そういった意味でも今後5年くらいの間に、この両軸を定着させることができればと考えています。5年後には、「あの会社はおもしろいブランディングやクリエイティブをやるよね」と言われる会社になっていたいですね。
ちなみに私個人の野望は、趣味のサーフィンをしながら日本の海岸線を車で一周することです(笑)。いまはどこにいても仕事ができるので、あまり歳を取らないうちに1年くらい会社を休んで行きたいですね(笑)。
――素敵な野望ですね!最後に、求職者の方へメッセージがあればお願いします。
ブランディングは短期的に結果に直結するものではありませんが、クライアントと腰を据えて地道にクリエイティブを提供したい方にとって、とても働きがいのある環境だと思います。
また、今後5年の間に、会社はいまの形からおそらく大きく変わっていきます。いま居るメンバーだけで5年後を描けるかというとそうではないので、新しい仲間を加えることで、より強い組織にしていければと思っています。だからこそたくさんのクリエイターの方に応募していただき、活躍の場を広げてほしいですね。
【求人情報】
エディトリアルデザイナー/Webプロデューサー/制作ディレクター
新卒で印刷会社に入社し、制作ディレクターとして各種プロモーションツールの制作に関わる。その後、大手採用エージェンシーに出向し、クリエイティブディレクターとして金融・通信・メディア・商社など100社以上の採用ブランディングに従事。2012年に印刷会社で家業の株式会社明祥の経営を引き継ぐ。2013年に新規事業としてglassy株式会社を立ち上げ、これまで大手上場企業をはじめとする200社以上に企業広報支援サービスを提供している。