公開日:2024/07/29
——最近、社内にデザイン室を設けたそうですね。それはなぜでしょうか?
林:以前は店頭のディスプレイ、内装、Web、外部に発信するものはすべてひとつの販促チームでおこなっていました。2年前ぐらいから店舗が大型化して数も増え、さらに企画の数も多くなったことから、一つひとつのコンテンツを充実させていくためにプロフェッショナルチームであるデザイン室を独立させました。
——デザイン室の発足時はどのように人材を募集されたのでしょうか。
林:もともと販促チームの中でもグラフィックデザイナーなどはいたので、そのメンバーを残しつつ、 店舗で働くスタッフから募集をしたり求人を出したりして人数を増やしていきました。志知もそのひとりですね。
そもそも私が入社した5年前は本部メンバーの数は現在の半分くらいで、店舗経験を経て本部に配属された人がほとんどでした。いまは店舗経験者も中途採用も半々くらいです。
中途の人は他社の経験があるのですぐにプロの仕事をしてくれますが、店舗での経験や3COINSのスピード感を理解していないと、実際の店頭での商品提案をしづらいということもあります。新卒の人たちのように現場を知っているかどうかや、店舗との連携のしやすさというのも大切だなと思います。新卒も中途も、どちらも良さがありますよね。
——デザインを外注する会社もある中で、インハウスデザイナーがいることはスピード感にもつながっているのではないでしょうか。
林:私たちも完全にインハウスデザイナーだけではなく、外部のデザイナーにお願いすることもあります。すごく小さな店舗から超大型店まであり、店舗ごとに必要な販促物のサイズや形状が違ったりするので、インハウスデザイナーが考案したデザインを外部のデザイナーに展開してもらっています。
でもバイヤーとのすり合わせをはじめ、商品撮影などあくまでコアなところは自分たちで取り組んでいます。
——インハウスデザイナーならではの面白さや苦労はありますか?
林:やはりスピード感でしょうか。月曜日に店頭に出したものが、火曜日には売れているかどうかの結果が出るスピード感は、ほかの会社では味わえないと思います。店頭での打ち出し方を少し変えるだけで売れ行きが変わることを実感できるのも、面白いと思います。
さらにインハウスだからできたことと言えば、「and us」 というコスメブランドのリブランディングですね。私が入社したときはコスメ商材の売り方に苦戦しており、継続するか、辞めてしまうかの瀬戸際でした。そこで、最後にやりたいことを思いっきりやることにしました。
ブランド名を付けてロゴを新しくし、はじめてモデルを起用したりと思いっきりブランドのイメージを変えてみました。その結果、お客さまからの反応が良く、最近ではand usの認知も増え、SNSでバズるアイテムも増えています。
林:4年前に思い切ってリブランディングしたことで、選んでいただけるブランドになったのは嬉しいですね。思い切ってやれるというのは外からの提案だとなかなか難しいですし、商品部と密に取り組めるのはインハウスだからこそかなと思います。また、こういった挑戦をフットワーク軽くやらせてくれるのは、3COINSらしさとも言えますね。
——どんな方を採用したいと考えていますか?
林:ここ数年で積極的に採用していますが、共通して言えるのはやはりモチベーションが高い人に入社してほしいということですね。スキルは入社すればなんとでもなりますが、挑戦したいという気持ちは教えられないので。
志知:そうですね。モチベーションも大事ですが、私はコミュニケーションを大切にできる人と一緒に仕事をしたいですね。本社が大阪で、私が勤務しているのは東京ということもあり、同じチームだけでなくほかの部署との連携も大切かなと思います。
——確かにモチベーションは大切ですが、一方でそれを維持するのも大変だと思います。 会社としてモチベーションが維持できる仕組みなどはありますか。
林:若手の場合は半年に1回のペースで上司との面談があり、その場でできたこと、できなかったこと、さらに双方の思っていることを意見交換できます。
志知:日々ずっと同じ作業が多いので、面談で「あの見せ方良かったよ」と言ってもらえるだけで、やはりモチベーションにつながると思いますね。
——新人への教育は、どういうことに取り組まれていますか。
林:店舗の新人研修では先輩が新人の面倒をみるシスター制度があります。ブランド規模が大きくなってきているので人材育成が急務なんです。いままでは、3~4年かけて店長にしていたのを、いまは2年ぐらいで店長にというスピード感です。
一方で私たちのような本部のデザイン室は、やりながら覚えることが多いですね。それはデザインという専門職だからこそですが、考えるよりは見て覚えることが多いです。撮影に同行してもらったり、とりあえず現場で自分たちの姿を見てもらう。デザインに対しても、どういう目線で修正を入れているかなど、できるだけ細かく理由を伝えるように心がけています。
——評価制度はどんなシステムになっていますか?
林:株式会社PALとして、ステップをあがっていく評価制度があります。私たちのチームであれば、後輩を育成できるようになり、さらにその後輩が独り立ちできるようになったら自分の評価も上がるというかたちですね。自分でやっていたことを、誰かにボールを渡していくようなイメージです。
そして、後輩とマンツーマンで取り組んでいたところから、それができるようになったら、後輩が2人、3人と増えていく。そしてチームごと任せてもらえるようになりますね。
——最後に、30周年を迎えて今後の3COINSについてお聞かせください。
志知:今年でブランド発足から30周年ということで、同じく30周年の「名探偵コナン」とのコラボレーション商品を発売したり、ほかにもガイドブックの「地球の歩き方」とのコラボしたりと、他社でやれない“スリコらしい”デザインでコラボ商品を開発しています。
働いている私たちにとって30周年はすごいことですが、お客さまからするとそんなに意識はしていないと思います。こういった企業コラボを積極的におこなうことで、認知が広まってくれたら嬉しいです。
林:「100円では実現できない、ちょっとプラスアルファの付加価値をつけて300円でものを売る」という考えのもと、3COINSが生まれたことは驚くべきことだと思います。さらにそれが30年続いたこともすごい。しかし現実問題として物価の上昇や為替の影響など、300円の商品だけで続けるというのは難しい時代でもあるので、これからも新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。
今年のゴールデンウィークには、原宿本店限定で3COINSとしてはじめて、古着を売るという新しい取り組みをしました。ブランドが生まれた当初は海外で買い付けて売るスタイルだったことや、株式会社PALがアパレルの会社なので、アパレル商材を扱ってみようと考えたんです。結果として、2週間でほぼ完売するほどの好評でした。今後はプロダクトだけじゃないことにも力を入れていくと、さらに面白くなるのかなと考えています。
大阪と東京のデザイン会社にて、様々なブランドや、企業、商業施設の広告、販売プロモーションのデザイン制作に携わる。その後、アートディレクターとして、店頭販促だけではなく店舗、イベントの空間デザイン、WEB、プロダクトなど様々な分野のクリエイティブを手がける。2020年から3COINSのリブランディングに伴うデザインディレクションに関わる。
2015年にアルバイトとして入社。2019年に社員登用後、店長として2店舗の新店立ち上げ等を経験し、約4年間勤務。2020年にVMDとして本部所属となり、商品展開やディスプレイ作成などを担当。