フォントワークス
撮影:葛西亜理沙 取材・文:堀合俊博(JDN)

公開日:2020/02/25

クリエイティブなオフィス探訪

遊びを生む自由な空間で、“もじ”の楽しさを発信

フォントワークス

アイデアやクリエイションが生まれるワークプレイスを紹介する「クリエイティブなオフィス訪問」。第4回は、フォントメーカー「フォントワークス」のオフィスにお邪魔してきました。

1993年に創業した同社は、2019年に福岡から東京へとヘッドオフィスを移転。これまで本社機能を担っていた福岡オフィスを、デザイン・制作部門およびカスタマーサクセス部門の拠点とする「Fukuoka Creative Lab」と位置づけ、東京のヘッドオフィスに営業拠点・開発拠点・管理部門を集約させました。

「クリエイティブとエンジニアリングの融合」「遊びながら仕事する」「社員同士のコラボレーション」をテーマとした新オフィスの魅力を、代表取締役社長CEOの原田愛さん、マーケティング部マネージャーの伊豆蔵善史さんにうかがいました。

代表取締役社長CEOの原田愛さん(左)と、マーケティング部マネージャーの伊豆蔵善史さん(右)。段差のある空間の背面には、フォントワークスの書体をつかったコーポレートメッセージが記されている。

代表取締役社長CEOの原田愛さん(左)と、マーケティング部マネージャーの伊豆蔵善史さん(右)。段差のある空間の背面には、フォントワークスの書体をつかったコーポレートメッセージが記されている。

“もじとじゆうに”たわむれるオフィス

2018年に創業25周年を迎えたフォントワークスは、新しいタグラインとして「もじと もっと じゆうに」を掲げています。上海を中心に活動する「Prism Design」が手がけたオフィス空間は、まさにタグラインを体現するような、“じゆう”な遊び心に溢れた空間デザインになっています。

エントランス空間

エントランス空間

訪れた人を文字の世界に入っていくような気持ちにさせるエントランス空間では、アラビア文字が記された無数のパネルが吊り下げられています。

原田:このパネルは紙とプラスチックで、1つひとつ手作業でつくっていただきました。「マトリックスみたいな世界を表現した」と、Prism Designさんがおっしゃっていましたね。ドアが開くとぱっと明るい色が広がっていくので、その緩急を楽しんでもらいたいですね。

プラスチックのパネルに、紙のアラビア文字が1つひとつ手作業で貼られている。「アラビア文字が好きなんですよね。最初は私の執務室のスモークにして欲しいなと思っていたんですけど、完成したらエントランスになっていました(笑)」(原田さん)

プラスチックのパネルに、紙のアラビア文字が1つひとつ手作業で貼られている。「アラビア文字が好きなんですよね。最初は私の執務室のスモークにして欲しいなと思っていたんですけど、完成したらエントランスになっていました(笑)」(原田さん)

エントランスを抜けた空間では、「多様性」を表しているというカラフルなカーペットが目に飛び込んでくる。中に進めばチョークアーティストの「CHALKBOY」が手がけた手描きの文字が訪問者を出迎える。「オフィスではデジタルとアナログの融合を表現したくて、ハンドライティングのチョークアートを1日がかりで描いていただきました。四半期に一度、季節に応じて変えていこうかなと思っています。いまはオフィスができたばかりなので、お出迎え感のあるものにしています」(原田さん)

エントランスを抜けた空間では、「多様性」を表しているというカラフルなカーペットが目に飛び込んでくる。中に進めばチョークアーティストの「CHALKBOY」が手がけた手描きの文字が訪問者を出迎える。「オフィスではデジタルとアナログの融合を表現したくて、ハンドライティングのチョークアートを1日がかりで描いていただきました。四半期に一度、季節に応じて変えていこうかなと思っています。いまはオフィスができたばかりなので、お出迎え感のあるものにしています」(原田さん)

遊びとコミュニケーションが生まれる空間づくり

メインの執務エリア。写真右はバックオフィスのスタッフの席で、写真中央奥には作業に集中するための空間も。

メインの執務エリア。写真右はバックオフィスのスタッフの席で、写真中央奥には作業に集中するための空間も。

執務エリアで大きく目を引くのは、「Creatvie」「Collaboration」の頭文字である「C」字形のデスク。フリーアドレス制が採用され、一人ひとりの作業空間は広めに確保されています。4mほどある天井の、剥き出しになった配管もインパクト大。

執務室の壁の大きなモニターは、福岡のオフィスとリアルタイムに繋がっており、マイクを使っていつでも会話ができるようになっています。東京の新オフィスがつくられる前は、グループ会社であるSBテクノロジーがオフィスをかまえる新宿イーストサイドスクエアと、原宿の「WeWorkアイスバーグ」の2拠点を東京オフィスとしていたそうですが、東京と福岡のそれぞれの場所で働く様子がまったく見えなかったことから、このような設計にしたそうです。

福岡のオフィスとつながる大きなディスプレイ。東京と福岡で同じケータリングのランチ会を実施することもあるそう。モニターに映る福岡のオフィスが東京オフィスと地続きであるような、同じデザインに統一する計画も考えている。

福岡のオフィスとつながる大きなディスプレイ。東京と福岡で同じケータリングのランチ会を実施することもあるそう。モニターに映る福岡のオフィスが東京オフィスと地続きであるような、同じデザインに統一する計画も考えている。

伊豆蔵:メールや電話、時にはテレビ会議などでコミュニケーションをとっていましたが、普段はお互いがどのように働いているかがわからなかったんですよね。いまはモニター越しにいつでも様子が見えるので、今日は誰がいるのかがすぐわかるのがいいですね。

原田:最初はいつもモニターに映されていることに抵抗感がある人もいたんですけれど、いまはもう慣れて気軽に声をかけあっています。常時見えているとぜんぜん違いますね。あ、コンビニ行ってきたんだなっていうのもわかりますし(笑)。

現在30名ほどのスタッフが働く東京オフィスは、打ち合わせ室や作業空間のバリエーションの豊かさも特徴のひとつです。3、4人ほどでの打ち合わせ室に加え、2人用の打ち合わせ室が2つ。執務室の窓際にはカウンターテーブルがあり、2、3人が座って話すことができる空間も用意されています。さらに、作業に集中したいスタッフのためには、執務室奥に作業空間が配置されています。

2人用の打ち合わせ室。「ちょっとした打ち合わせスペースは、ふんだんに配置するようにしました」(原田さん)

2人用の打ち合わせ室。「ちょっとした打ち合わせスペースは、ふんだんに配置するようにしました」(原田さん)

3、4人向けの打ち合わせ室。訪問時はちょうど打ち合わせの最中でした。

3、4人向けの打ち合わせ室。訪問時はちょうど打ち合わせの最中でした。

来客用の会議室は2部屋。中でもテーブル・フットボールのようなデザインのデスクと、壁面に巨大なピンボール台が埋め込まれた打ち合わせ室はとってもユニーク。

原田:当社はゲーム会社さまとお付き合いがあり、いろいろとサンプルをいただくので、ゲームができる部屋が欲しいなと思っていたんですけど、スペースの関係で打ち合わせ室と兼ねるかたちになりました(笑)。開発中のフォントも、ここのモニターで見ながら打ち合わせしています。

伊豆蔵:わくわくする感じで打ち合わせできればと思っています。

「FONT 」の文字を象ったランプと「font works」パネルなど、レトロな雰囲気の打ち合わせ室。ピンボール台下の収納空間にはゲーム機があり、オフィスのオープニングパーティーではゲストの皆さんと一緒に格闘ゲームをプレイして盛り上がったそう。「ここならアイスブレイクいらずですよ」(原田さん)

「FONT 」の文字を象ったランプと「font works」パネルなど、レトロな雰囲気の打ち合わせ室。ピンボール台下の収納空間にはゲーム機があり、オフィスのオープニングパーティーではゲストの皆さんと一緒に格闘ゲームをプレイして盛り上がったそう。「ここならアイスブレイクいらずですよ」(原田さん)

大人数での打ち合わせ室。壁面の棚には、オフィスのオープンを記念してスタッフ全員が目入れしただるまが並ぶ。

大人数での打ち合わせ室。壁面の棚には、オフィスのオープンを記念してスタッフ全員が目入れしただるまが並ぶ。

だるま

編集後記


「ちょっとした打ち合わせスペースは、ふんだんに配置するようにしました」と原田さんが語るように、働く人たちのさまざまなシーンに対応するように空間がつくられているのがとても印象的でした。ひとりの作業空間をはじめ、2人での打ち合わせ、複数人でのディスカッションなど、用途と場面に合わせて自由に作業空間を選ぶことができるので、ヘッドオフィスのテーマである「社員同士のコラボレーション」が自然に生まれる空間になっています。

執務室中央のC字形のオフィスも、ユニークなだけではなく、自然なコミュニケーションをとりやすいかたちだと感じました。横並びのテーブルでは、両端のスタッフとのコミュニケーションがなかなか生まれにくいですが、Cの字の曲線に沿って並ぶことで視界に入る範囲も広く、ちょっとした会話が生まれやすいのではないかと思います。

また、フォントワークスで働くみなさんは、名刺のフォントを自分のお気に入りの書体でつくることができるんです。社員証の写真はスタッフがそれぞれが自由なポーズをとり、プロのカメラマンが撮影します。そういった、遊びながら自由に働くことができる職場づくりを、空間だけでなく社内の文化としても実践しているのが素敵だなと感じました。

フォントワークス看板照明ロゴ

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PROFILE
フォントワークス
文字を通じて新しい文化創造の担い手になることを企業理念として1993年に生まれ、 2018年で創業25周年を迎えたフォントメーカー。 業界初の年間定額制フォントサービス「LETS」をはじめ、「ちょうどいい文字を、ちょうどいい価格で」を コンセプトにしたセレクトフォントサービス「mojimo」などを提供。表現の不自由さを取り払い、誰もがスタイルを持つ日常を手に入れられるよう、 文字の可能性を絶えず考え続けている。