株式会社キャップ
取材・文:瀬尾陽(JDN) 撮影:木澤淳一郎

公開日:2016/11/11

働き方インタビュー

やればやるほど問題がみえてくる、それがこの仕事の魅力

株式会社キャップ

小泉桃子 デザイナー

アートディレクター藤本やすしさん率いるデザインオフィス「CAP」で、表参道ヒルズの広告制作物などのデザインを手がける小泉桃子さん。「いまある仕事を1個1個やっていくっていうタイプ」と自ら語る小泉さんに、グラフィックデザインを仕事としていくことの魅力や難しさ、そして今後目指していることなどをうかがった。

デザイナーは場面によって求められることが異なる


Q.小泉さんのお仕事について教えてください

いま、CAPに入社して3年目です。基本的にはCAPはチームに別れてやっています。私は表参道ヒルズの販促物全般、「OMOTESANDO HILLS JOURNAL」という冊子のデザインを担当していて、撮影などにも立ち会っています。春夏秋冬で年に4冊+クリスマス号があるので合計5冊やる感じですね。それに合わせて館内のポスターなどもつくったりします。

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だいたい、一番はじめの打ち合わせがあってから配布まで3ヶ月くらいかかります。商品の撮影とかもあるので、一番初めに撮影の前にラフをつくって、こんな風に撮影してレイアウトして……とか、そういうことからスタートするので、けっこう時間がかかっちゃうんですよね。数10ページつくるのに、なんでこんなに時間がかかるんだ!っていつも思います(苦笑)。

チームとしては、CAPからはデザイナー私1人、アートディレクターの藤本(やすし)、あと系列会社のRocket Company*(雑誌や書籍の編集制作、イベントの企画運営・コーディネート・キャスティングなどを手掛けるクリエイティブプロダクション)のメンバーと一緒に仕事を進めています。

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実際にこれに関わるようになってちょうど1年です。去年のクリスマス号から私が担当になりました。それまでは、自社発行の「Rocket Magzine」や雑誌以外の印刷物などをデザインしていました。

デザイナーは場面によって求められることが違うと思うんですね。「OMOTESANDO HILLS JOURNAL」のようなクライアントワークは、編集者が全体の設計図を組み立ててくれますが、つくろうとしているものの大きな枠を理解ておかないとデザインできないっていうのはあります。反対に自社で発行している「ROCKET MAGAZINE」などは編集の要素も含め、デザイナーが考えて作業する感じはありますね。

Q.デザインするときに大事にしていること

去年まではわりとフォーマットがあったんですけど、今年は1号ごとにレイアウトを変えていて、ちょっとアート系のファッション雑誌やカルチャー雑誌に近い感じを目指しています。こういうレイアウトのアイデアを考えるのは楽しいですね。

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毎回ネタを考えるために、海外のファッション誌とかカルチャー誌とかはよくチェックしています。会社にある本だったり、自分で買ったものだったり、このレイアウトはステキだなと思うものを携帯の中に撮り溜めておいて、デザイン案をなんとなく考えるときにパラパラ見たりしています。あと、日々いろんなお店にいって、かわいい印刷物はもらって帰ってストックしています。そういう資料を集めるのも楽しいですね。何も買わないくせにいっぱいもらって帰る、みたいな(笑)。

もちろんファッションは好きなんですが、ファッションというかモードみたいなものを理解したうえで、何かつくるっていうのは大変ですね。ご一緒するカメラマンやスタイリストは一流の方々なので、その方たちと同じレベルで理解してデザインするっていうのは難しいです。そういうトップの方たちは人間的に素敵な方が多いので、一緒にいるだけで本当に勉強になります。

CAP代表の藤本は個人の考えを尊重してくれる


Q.CAPに入社したきっかけ

CAPに入る以前は、大学を卒業してから3年半くらい小さな事務所にいたんです。その会社では週刊誌など、イイ意味で“大衆のための”雑誌レイアウトをしていたので、自分がCAPに入れると思っていませんでした。CAPは、ただ純粋に憧れていた会社でした。その事務所で働いてちょうど3年半くらい経ったときに、大学の先輩が雑誌のチームのチーフになるので、一緒にやらないかというお話しをいただいて、それをきっかけに前の会社を辞めてるんですけど、編集者の求めているものとデザインチームが目指しているものとの間に隔たりが生じてしまい、半年ほどでチーム自体が解散となってしまいました。声をかけてくれた先輩がCAP出身だったので、そこでCAPを紹介してくれました。

もちろんCAPという会社に憧れているところはありましたが、私はデザインに対しての知識とか意識が低くて具体的にはあんまり会社のことをよくわかっていませんでしたね。だから、振り返ると徐々に勉強していったんだなと思います(笑)。

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Q.CAPの社風を教えてください

基本的にはみんな社員ではなく、フリーランスとして契約しているので、けっこう自由にやらせてもらっています。会社によっていろいろ進め方があると思いますが、アートディレクターがつくりたいと思っているものを投げてくるのではなくて、まずは私のほうで可能性がありそうなものを探りながらつくって、それをアートディレクターにチェックしてもらって、そこからまた進めていくみたいな感じでやらせてもらえます。自分が良いと思ったものをつくることが許されますし、基本的に自分の判断でいろいろ仕事ができるので楽しいですね。

やっぱり、代表の藤本からは影響を受けます。特にコレっていうエピソードはないんですけど、いろんなタイミングでやっぱりすごい人だなって思います。なんて言ったらいんだろう……すごい器が大きいと思います。もちろんデザイン的にダメなものはダメと指摘はあります。それ以前に個人として考えていることを尊重してくれるので、そういうところが素晴らしいですね。

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いちおう勤務時間が14時から22時までで、退社するのは22時半くらいですね。やることがあれば残ったりしますが、時間に追われてどうしようもないってことは、私が入ってからはないですね。でも、14時から始業って遅いですよね(笑)。朝方にしたいなあって気持ちはあります。だから、朝8時とかから撮影があるときは本当につらいです。つらいって言うほど早くもないんですね。

会社が決めた時間のルールで動くっていうよりは、基本的にけっこう個人に丸ごと任せてくれるので、自分でちゃんと管理していかないといけないんです。それはありがたいですけどね。仕事の特性上ある程度時間かけないと、ちゃんとしたものにならないですから。でも慣れるのに2年くらいかかりました(笑)。

デザインしたいのはちゃんとつくりたくなるレシピ本


Q.この仕事のおもしろさとやりがい

仕事のおもしろさを言葉にするのは難しいですね…。魅力でいっぱいなんですけど、仕事だからがんばってやっているというのもありますが、それ以上に、仕事を自分にとっての問題としても捉えているので……。なんて言ったらいいんですかね、自分の仕事がお金を生み出していくべきだと思うんですけど、それもありつつ、自分にとって解決していくべき課題という意味もあると思っています。

自分が関わったものを、3ヶ月とか4ヶ月して振り返ると、「もうちょっとこうすればよかったな……」と思ってしまうものなんですね。クライアントに気に入っていただければ、それでもちろん正解なんですが、自分の仕事としてデザインをやるうえで、クライアントが良いと言ってくれたからOKじゃん!ってわけにはいかないじゃないですか。そこは追求していくべきだなと思ってます。だから、やればやるほど問題がみえてくるってことだと思うんですよね。そういったところが、この仕事の魅力ということなのかもしれないですね。

リトゥンアフターワーズの山縣良和さんのイラストを配した、「OMOTESANDO HILLS JOURNAL」春号

リトゥンアフターワーズの山縣良和さんのイラストを配した、「OMOTESANDO HILLS JOURNAL」春号

「OMOTESANDO HILLS JOURNAL」春号のときは、お花とか使いたいみたいなクライアントの要望がありました。でも、春だからお花が咲いてて、全体的に薄いピンクのトーンみたいな感じではない提案がしたくて。やっぱりお花を使いたいという気持ちはわかるし、クライアントの要望は尊重したいので、このときは「リトゥンアフターワーズ」の山縣(良和)さんが描いてくださった花のような色彩のイラストを使いました。それを写真に組み合わせてみたデザインを採用しています。

クライアントがおっしゃっている意図もわかるし、そこにはやっぱり応えていきたい。だから、「かっこよくしたい」が先行して、クライアントの意図に合わないことをしてしまうのはナシだと思います。でも、正解はよくわからないですね。クライアントに言われたとおりにするのはたぶん正解じゃないんですけど、かと言って見る人が見たらかっこいいというのも正解でもないですし。

Q.今後、手がけてみたいこと

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表参道ヒルズの仕事は冊子だけじゃなくて、幅10mの看板みたいなものも展開するので、大きいものもつくれて、小さいものもつくれる、そういう仕事も今後も続けていきたいです。手の中に収まるものと同時に、ものすごい遠くから見るべきものをつくるっていうのはおもしろいです。スケールがぜんぜん違うことに取り組めるというのは変わった仕事ですよね。やっぱり大きなものができたときはテンションは上がりますし。でも、看板の文字のバランスがいまいちだなってなることもあるので、看板は実際につけてみないとわからないのが難しいですね。

正直言うと、あまり先のことは考えてないんです。これっていう理想はなくて、私はいまある仕事を1個1個やっていくっていうタイプなんですね。でも、3年くらい前からレシピ本をつくることにすごく興味があります。おしゃれで見やすくて、本当につくってみようと思えるレシピ本って意外となくて……。最初においしそうなおしゃれな写真がパーって並んでて、最後にレシピがドンってあると、あまりつくる気が起きないじゃないですか。おしゃれすぎるとハードルが高くてつくろうと思えないんですよね。買って読むのは楽しいんですけどね。

こういう工程とこういう工程があって、これができますよ、これに気をつけてくださいね、っていう機能がちゃんと載っていて、おしゃれでちゃんとつくりたくなるようなレシピ本。そういうのをデザインしたいなと勝手に思っています(笑)。

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PROFILE
株式会社キャップ
1983年に藤本やすしによって設立されたデザインオフィス。「VOGUE JAPAN」「BRUTUS」「Casa BRTUS」「ku:nel」のアートディレクションをはじめ、表参道ヒルズの広告制作物や、アパレルのシーズンカタログなどを手がける。 http://www.cap3hats.co.jp/

小泉桃子 デザイナー

東京造形大学造形学部デザイン学科 グラフィックデザイン専攻領域を卒業後、1社のデザイン会社を経て、2014年に株式会社キャップに入社。「ROCKET MAGAZINE」や「OMOTESANDO HILLS JOURNAL」のデザインなどを担当。