株式会社ネクサス
執筆:白坂由里 写真:高木亜麗 取材・編集:岩渕真理子(JDN)

公開日:2025/08/29

働き方インタビュー PR

商品のコンセプトを立体化。ネクサスが提案する化粧品ディスプレイの工夫

株式会社ネクサス

榎本理絵 (アートディレクター)

石井結花 (デザイナー)

コスメブランド『エスティ ローダー』の制作部長を務めていた坂本弘也により、2006年に設立された株式会社ネクサス。その名の通り、デザインとブランドの「ネクサス(絆)」をつくり出している。

『L’OCCITANE(ロクシタン)』、『ESTÉE LAUDER(エスティ ローダー)』、『SUQQU(スック)』などの化粧品のディスプレイデザインに特化し、視覚的に商品の魅力を伝えるVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)や、プロモーションのデザイン制作から、イベントになるまでの運営を展開。ブランドから直接依頼を受け、足を止めたくなるようなデザインを手がけている。

中でもロクシタンでは、年間12回ものプロモーションディスプレイをはじめ、小さなPOPやイベントディスプレイなどに携わっている。今回は、ロクシタンを担当する同社のデザイナーにインタビュー。中途入社13年目の榎本理絵さんと、中途入社2年目の石井結花さんに、ネクサスで働く魅力や、デザイナーとして大切にしていることをうかがった。

クライアントとの“近さ”が入社のきっかけ

――まずはお二人のこれまでのご経歴と、ネクサスに入社した理由を教えてください。

榎本理絵さん(以下、榎本):大学卒業後に勤めていた会社では、グラフィックなどの平面デザインを手がけていて、ポスターやCDジャケット、ロゴなどさまざまなものを制作していました。

その前職で知り合った方が、ネクサスの社長である坂本と知り合いで、デザイナーを探していると声をかけてもらいました。話を聞いたところ、クライアントとのコミュニケーションがより近いところでデザインの仕事ができそうだと感じたので、2012年にネクサスに入社しました。

榎本理絵さん

榎本理絵さん

石井結花さん(以下、石井):私は前職では、化粧品メーカーの商品企画部でインハウスデザイナーをしていました。その中で、私もクライアントと密接に商品づくりに関われるところでデザインの仕事をしたいなと思っていました。

ネクサスは化粧品メーカーの店頭のディスプレイや什器などを手がけているので、クライアントへのアプローチが近いところでお仕事ができそうだと思い、一昨年ネクサスに転職しました。

石井結花さん

石井結花さん

平面のデザインではない、商品の展示空間をつくるデザイナー

――現在、ネクサスではどのようなお仕事を担当されていますか?

榎本:ネクサスではそれぞれチームでブランドを担当していて、2人ともロクシタンを担当しています。おもに全国の店舗プロモーションがはじまるタイミングで、商品のディスプレイや什器デザインを手がけています。私はアートディレクターとしてチームを統括して、いままで経験してきた部分を踏まえつつ教えたり、こういう方向がいいんじゃないかなどのアドバイスをしています。

石井:私はロクシタンの中でも、1ヶ月に1回、限定品の発売に応じて店頭用のディスプレイなどを担当しています。そのほかにも不定期でホテルやスパなどでロクシタンとコラボするイベントなどもあるので、その店頭用の備品の発注や装飾、会場の一部分に撮影スポット用の展示空間などをつくるといった仕事もしています。

商品のコンセプトを立体化。ネクサスが提案する化粧品ディスプレイの工夫

――平面的なグラフィックデザインとは異なる、立体的なデザインを手がけているのですね。

石井:その時の商品やプロモーションによって変わるコンセプトや特徴を、お客さまにどういうところを伝えたいか、そしてそれを店頭でどう表現するかが重要になってきます。平面のデータをいただいたら、どういう素材を使って、どういう色にするかなど、どのように立体に起こすかをデザインするのが私たちの仕事です。

予算もプロモーションごとに違うのですが、紙素材を使うことが多いので、テーブル上でのボリューム感や大きさを想定し、その中で新しい見せ方を考えたり、似ているようでいて新しさがあるように毎回見せ方を変えたり。いろいろ工夫して提案をすることは難しさであり、やりがいでもありますね。

榎本:平面のグラフィックデザインでは、常にパソコンの前で考えているようなデスクワークが多くありましたが、ネクサスに入社してからは、一から自分たちで素材を探したり、店舗を見に行ったり、体を動かすことが多くなりましたね。

石井:また、ロクシタンはサスティナブルにこだわっているので、適した素材を探して、環境にどの程度配慮されているのかエビデンスを取ることも大切です。見えている部分だけではなく、見えていない部分にまでも配慮しています。

――直近のお仕事では、どのようなデザインを展開したのか教えてください。

石井:直近では、ロクシタンの定番「ヴァーベナ」シリーズの店頭プロモーションを手がけました。ロクシタンで毎夏販売される人気の商品で、暑さを乗り切るために、今回はさらにひんやり感、クール感を強く伝えたいということでした。

肌につけた時のひんやり感を表現するために、ざらっとしているフロストシートのような素材に、光沢感のあるミラーシートを重ね、その上にさらに氷っぽく見えるキラキラしたシートを重ねてレイヤーにすることで、冷たそうな見え方を提案しました。

「ヴァーベナ」シリーズの店頭プロモーション

「ヴァーベナ」シリーズの店頭プロモーション

――ポスターなどの平面のデザインと違う難しさはどういうところですか?

石井:VMDでは、文字などをレイアウトするグラフィックデザインと異なり、マテリアルも考えなければなりません。パソコン上だけの仕事ではなくて、画面上で見ていたものが紙に出力され、立体になるとまた違ったりもするので、頭の中で考えるだけではなくて、アウトプットして、実際に店頭でお客さまがそれを見てどう感じるかまで考えていきます。

最初に社内で簡易的に出力してみて、大きさや見え方などを検討します。それからクライアントのオフィスに持っていってプレゼンし、どういう風に改善していくかフィードバックをもらい修正していきます。

さらに店舗空間ではまた見え方が変わるので、プロモーションがはじまったタイミングで実際に店頭に行き、見え方やお客さまの反応がどうかも確認しています。その時の新製品やリニューアル、限定品などは特に、お客さまが手に取った時の反応は私たちも気になるところです。

榎本:そうですね。商品は手に取ってみないとわからない部分も多々あるので、いかに手に取ってもらうかが大事ですし、難しさを感じる大事な部分です。

――VMDのデザインで大切にしていることや、やりがいに感じる部分はどういうところですか?

石井:商品やクライアントとお客さまを繋ぐところが一番大事なので、お客さま目線で考えることを大事にしています。前職ではインハウスデザイナーだったので、自分がいいと思う主観で仕事をしていましたが、ネクサスはクライアントの意見やお客さまの反応を見て制作するところは違います。

年間を通じてロクシタンと仕事ができるので、直接フィードバックをもらって改善しやすいというメリットがあります。結果として、売れ行きがいいと聞くと、自分でもちょっと貢献できたのかなという実感があります。友人など近い人から、「買ったよ」「店頭で見たよ」と言ってもらえると達成感に繋がりますね。

商品のコンセプトを立体化。ネクサスが提案する化粧品ディスプレイの工夫

――同じロクシタンでも、百貨店、ショッピングビルなど、その店舗の雰囲気や大きさなどによっても変えなければならないのでしょうか?

榎本:そうですね。若干サイズや形などを変えなくてはいけない時は大変ではありますね。何年かごとに本国でコンセプトが変わるので、それに合わせて日本の店舗もリニューアルしていくため、いまも新旧混在している感じがあります。

全国で同じプロモーションがおこなわれる時は、雰囲気を変えながらも統一感を出さなければいけないので、特に力を入れているものは細かく変えることもあります。

――工場とのコミュニケーションで意識されていることはありますか?

榎本:例えば、工場ではこれだけ頑丈につくっているから大丈夫だろうと想定していても、実際配送の時に破損が起きることがあります。念には念を入れて、最後の梱包まで指示するなど、気になる点は細かく伝えることが大事かなと思います。

組み立て方まで考えてデザインする

――いままでに手がけた案件の中で思い出深いお仕事はありますか?

榎本:一昨年に広く展開していたリセットセラム「イモーテル リセットセラム」が、規模感が大きく印象に残っています。ロクシタンはエコロジカルを意識しているのであまり使うことがなかったのですが、この時は百貨店でよく使われるアクリルをたくさん使いました。グラフィックではあまりない新しい素材を扱うことで、自分の引き出しを増やす機会になったかなと思います。

アクリルを使って展開したリセットセラム「イモーテル リセットセラム」のプロモーション

アクリルを使って展開した、リセットセラム「イモーテル リセットセラム」のプロモーション

石井:私は、昨年のホリデークリスマスの商品ではじめて、プロモーション全体を担当させてもらいました。1年の中でクリスマス商戦は特に力を入れているので、規模感が大きいので大変でしたが、その分やりがいもありました。

店頭での見せ方のボリュームが増え、他社もきらびやかになっている中で、店頭で一番大きなメインテーブルに、普段より少し高級感を出す見せ方や、華やかな部分を出そうと気合いを入れて取り組みました。

バッゲージやトランクをモチーフにしたホリデークリスマス

バッゲージやトランクをモチーフにしたホリデークリスマス

石井:この年は、バッゲージやトランクのようなものがモチーフになっていて、それを紙素材を使って店頭でどんな見せ方ができるかを検証して、トランクのほかに箱なども作成しました。

私たちが全国にある各店舗に直接行くのではなく、店舗の方々がそれぞれのプロモーションツールを指示書を見ながら組み立てることになるので、いかに誰でもつくりやすく、キレイに見えるか、なおかつロクシタンとしての統一感も考える、これも重要な仕事のひとつです。

平面から立体に具現化する力と、人と会って話すフットワーク

――他社のグラフィックデザイナーとは異なる、求められる能力はありますか?

榎本:大前提として、グラフィックデザインなど、まず平面でも考えられることは必要かなと思います。立体を考えるにしても、最初は平面でラフでもなんでも描くことからはじまるので。

あとはIllustratorとPhotoshopの最低限の知識がマストで、それに加えて立体を考えられる人でしょうか。また、忙しい時期もあって、休日は自分たちで調整していくので自己管理ができる人の方がいいと思います。

石井:ほかには、化粧品が好きな方がいいですよね。立体的な考え方も必要なので、手を使ってものをつくることに積極的な人の方が向いているかもしれません。いろいろな見え方を考える必要があるので、探究心も必要かもしれないです。

――どのような人が向いていると思いますか?

榎本:コミュニケーション力がすごく高い必要はないんですけど、クライアントと直接やり取りするので、明るくて話すことが好きな人の方がいいですね。仕事の話以外でも、飼っている猫の話とかお菓子の話とか、クライアントは女性が多くてそういう話も好きなので、自然とそんな会話もできる人がいいのかなと思います。

石井:そうですね。好奇心があり、いろいろなことに挑戦していきたい方にも向いていると思います。

――坂本社長はこの業界で先駆的に活躍されてきた方だと思いますが、坂本さんの教えやご自身が大切にしていることはあれば教えてください。

榎本:プロモーションの内容にもよりますが、雰囲気だけでも早めに見たいということがあるので、最初の打ち合わせから2週間くらいでいくつかバリエーションを出して、そこから話し合いながら詰めていく感じが多いです。担当者の好みなどもあるので、その人が使いたい素材を読みつつ提案します。

商品のコンセプトを立体化。ネクサスが提案する化粧品ディスプレイの工夫

榎本:私たちがおこなっているVMDは、マーケティングプランに基いた商品の位置付け、出し方などを決めてからの、最後の部分になるので制作時間が短いことが多いです。そのため、ある程度の早さが信頼に繋がります。早すぎなくてもいいのですが、すぐのレスポンスはとても大事かなと思います。

その上で必要だったらすぐにクライアントのオフィスに向かいます。いまはオンラインで打ち合わせもできますが、坂本は直接話を聞いた方がいいと昔から言っています。なにかあったらすぐ行く、という姿勢は大事にしています。

――アイデアのストックが必要になってきそうですが、情報収集やアイデアに取り入れるために意識していることはありますか?

榎本:ディスプレイ品だけでなく、カゴや瓶などの依頼をいただくことがあるので、普段の買い物をしていてもつい探しちゃいますね。また、百貨店などにも立ち寄る癖とか、さまざまなのジャンルのお店を見るようにしています。

石井:メーカーに新しい商材について尋ねたり、逆に提案してもらったりもしています。知らないこともたくさんあるので、化粧品をはじめ、いろいろな店頭ディスプレイを参考にします。

レストランに行っても、この紙どこのを使っているんだろうとか気になったり、小さなPOPでもどう立っているのかを見たり。紙ひとつでも表現や見せ方は多様なので、いろいろ外からも吸収したいと思っています。

――最後にネクサスで働く魅力について教えてください。

榎本:坂本が社員のコミュニケーションを大事にしていて、定期的に仕事の区切りや、スタッフの誕生日にはみんなでご飯を食べます。オフィスではみんな席が近いので、「前にこの素材を使ったよ」とか情報交換や相談し合うことも気軽にできる雰囲気があります。

石井:榎本さんは、私が入社してからずっと指導してくれていて、いろいろ相談しやすい環境づくりをしてくれていました。なので、心配せずに仕事ができる社内の雰囲気があると思います。榎本さんは今秋から産休に入る予定なので、今度は自分もしっかりやっていかないとなという気持ちです。

榎本:石井さんは、わからないところはすぐに聞きにきてくれます。聞かずにそのままになってしまう人もいるので、とてもいいことだなと思います。常に新しい素材などを探したり、違った表現にチャレンジしたり、とても成長しているので心おきなく任せられます。

【求人情報】
有名化粧品ディスプレイを手がけるグラフィックデザイナー/オペレーター募集

商品のコンセプトを立体化。ネクサスが提案する化粧品ディスプレイの工夫

PROFILE
株式会社ネクサス
ブランドから直接依頼を受け、足を止めたくなるようなディスプレイを手がける会社。『L’OCCITANE』年間12回にもおよぶプロモーションディスプレイを担当、そのほかにも小さなPOPからSPAのディスプレイ、イベントディスプレイと多彩なデザインを得意としている。また、『ESTEE LAUDER』は日本全国の空港のみならず、GUAM SAIPANの空港や免税店のビジュアルをSingaporeのデザインセンターと直接やり取りをして制作している。『SUQQU』は新色テスタースタンドのデザイン、制作。そして今話題の『N organic』の店頭ディスプレイデザインも始めた。

榎本理絵 (アートディレクター)

主に平面グラフィックを手がけるデザイン事務所を経て、2012年にネクサスに入社。以来長きに渡ってロクシタンのアートディレクションとディスプレイデザインを担当。

石井結花 (デザイナー)

化粧品メーカーのインハウスデザイナーを経て、2024年にネクサスに入社。ロクシタンのデザインアシスタントを経て、現在は一貫したプロモーションのディスプレイデザインを手がけている。