株式会社メガネトップ
文:木村早苗 撮影:葛西亜理沙 取材・編集:堀合俊博(JDN) 

公開日:2020/01/31

働き方インタビュー PR

メガネトップが「MK LAB TOKYO」プロジェクトで目指す、アイウェアデザインの新しい仕組み

株式会社メガネトップ

冨澤昌宏 代表取締役

櫻井憲一郎 商品開発部 商品開発グループ長

1980年に静岡県で創業したメガネトップは、「眼鏡市場」や「ALOOK」、「LENS STYLE」などを展開し、この40年で文字通りの業界トップへと躍り出たメガネメーカーだ。「ちゃんと選ぶなら」をスローガンにかかげる眼鏡市場では、全国900店以上の店舗で一人ひとりに合ったメガネを販売。また、福井県鯖江市に自社工場と職人を抱え、デザインを含めた生産から検査、検品まで一貫して行うことで高い品質を維持するなど、ものづくりに徹底してこだわっているのも特徴だ。

これまでにもさまざまなプライベートブランド(以下、PB)商品を開発してきた同社は、このたび東京を拠点としたプロジェクト「MK LAB TOKYO」を開始する。本プロジェクトの背景や込められた想いについて、代表取締役社長の冨澤昌宏さんと商品開発グループ長の櫻井憲一郎さんにお話をうかがった。

年間200型のプライベートブランド商品を開発

――まずはそれぞれのお仕事について教えてください。

櫻井憲一郎さん(以下、櫻井):私は静岡本社にある商品開発グループで、PB商品の企画や開発に携わっています。お客様のご要望やマーケティング調査から、足りていない商品やつくるべき商品、強くしたい商品などを考えながら企画をつくっています。

株式会社メガネトップ 商品開発グループ長 櫻井憲一郎さん

株式会社メガネトップ 商品開発グループ長 櫻井憲一郎さん

冨澤昌宏さん(以下、冨澤):私は2代目の社長として2009年より代表を務めています。全国に直営が751店舗、フランチャイズが215店舗と全体で966店舗ありますので、私はその売上や運営状況をもとに、改善や拡大などの舵取りをしています。ほかにも、定期的に店舗回りをしていて、店長やスタッフ、地域限定のパートさんたちと直接お会いするようにしています。会社の方向性を話すことで会社を理解してもらい、みなさんの悩みや意見を聞くことで、会社をさらに好きになってもらいたいんです。

株式会社メガネトップ 代表取締役社長 冨澤昌宏さん

株式会社メガネトップ 代表取締役社長 冨澤昌宏さん

父でもある会長は、ゼロから会社を興して一代で今の規模に育てたわけですから、一言で言えば、カリスマ性の固まりです。私の役目は、その会長が切り拓いた道をもとに、荒削りな部分は整備し、足りない部分は補強して、そこに積み上げられる土台を固めることです。また、父から教えられた感謝の心を第一に考えています。お客様に接してくれるお店のスタッフがいてくれるからこそ、会社の売上やブランディングが実現できるので、スタッフにいつも感謝し、より働きやすい環境にしていきたいと思っています。

櫻井:PB商品は、年間で約200型ほど開発しています。市場やお客様の声、ファッショントレンドをもとに、メーカーの企画室やデザイナーさんからのご提案を一緒にブラッシュアップしていく流れが多いですね。中には経営企画室の室長からの提案で実現したnendoさんとのコラボ商品や、私が提案したゲーム『モンスターハンター』とのコラボ商品などもあります。「こういうものをつくりたい」と言えば、かなり挑戦させてもらえる環境なんですよね。

企画から販売まで、メガネへのこだわりを貫くための新しい仕組み

――新たなプロジェクト「MK LAB TOKYO」をはじめるにいたった背景を教えてください。

櫻井:これまでに眼鏡市場で出してきたPB商品のデザインは、オールターゲット向けのものが中心で、各地のスタッフからは、入社してからしばらくは目新しいものばかりで楽しいけれど、仕事を通してメガネに詳しくなってくると、どこかデザインの傾向が近いものが多いように感じるようになり、「もっとこだわりのものがほしい」と思うようになるとの意見をもらいました。それはおそらく、お客様も同じ気持ちでしょう。

冨澤:弊社のものづくりの基本は、自社工場のある福井の鯖江です。工場やメーカーの視点から店舗で売れる商品を考えるので、自ずとターゲットやデザインの傾向が似てくるんですよね。企画室からの提案であっても、櫻井一人が年間200型も監修すればどうしても個人の個性が出てきてしまいます。

メガネは小ロットでの生産なので、自動車のようなオートメーション化ができません。職人たちの力と、モノとしての機能性や役割を考えると品質の担保が重要で、通常で200以上の行程があるだけに、複雑すぎるデザインだと工場が受けられないこともあるんです。

櫻井さん、冨澤さん

櫻井:店頭からの要望に答え、現状から脱却するには、鯖江とは違う場所でものづくりをすることが必要だと感じていました。また、店頭展示での見せ方や世界観の打ち出し方など、商品企画の段階から一貫して考えることができる仕組みが必要だと考え続けているので、企画から販売まで、メガネに対するこだわりを徹底して貫くことができる新しい部署としてのMK LAB TOKYOの企画を、社長にプレゼンテーションさせていただいたんです。

冨澤:櫻井からのプレゼンを聞きながら、まさにその通りだと感じました。組織としてはまったく新しい取り組みなので、事業としてバランスが取れる仕組みと制度を考え、一緒に実現していきたいと思っています。

東京を拠点に、異業種が集う場所をめざして

―― MK LAB TOKYOの活動内容について聞かせてください。

櫻井:眼鏡市場の渋谷店上のオフィスを拠点に、渋谷の中心部で活動していくことで、最初はプランニングやマーケット調査を中心に行う予定です。東京という立地を活かして市場を捉え、MK LAB TOKYOをうまく表現するコンテンツを考えていきます。MK LAB TOKYOでは、イベントを実施したり、さまざまな企業や人が関わり合えるニュートラルな場所として、デザインをハブとしたプラットフォームにしていきます。異業種の方たちとも連携していきたいですね。売れる、売れないを超えた、今までとは違うことをしていくのがMK LAB TOKYOなんです。将来的にはMK LAB TOKYOのオリジナルブランドの立ち上げを考えています。

冨澤:MK LAB TOKYOでは、デザインしてものをつくるだけでなく、デザインを含めたものづくり、演出や世界観を伝えるための空間づくりや展示設計、店頭装飾のアイデアについても考えていきたいと思っています。静岡本社の営業企画やマーケティングディレクター、販促部や営業部ともコミュニケーションを取っていきたいですね。

――MK LAB TOKYOの始動にともない、メガネトップではデザイナーの求人も開始しますね。

櫻井:MK LAB TOKYOに業界の固定概念が必要ないという意味で、メガネ業界経験者ではない一般的なデザイン会社の経験があるプロダクトデザイナーさんのほうが、より新しい発想をいただけるかもしれませんね。東京でメガネのデザイナーをやりたいという思いとプロダクトデザインの経験があれば、メガネのデザイン経験の有無はあまり問わないです。メガネをかけていなくても「メガネが好き」ということが大事です(笑)。

また、デザインに集中しながらマーケットやターゲットについても考えることができる、デザイナーとしてのバランス感はとても大事だと思います。鯖江の職人とのやりとりもあるので、コミュニケーションをとりながら社内のひとたちと信頼関係を築き、自身で環境をつくっていける力も大切です。フレッシュな目線をデザインに活かし、異業種のおもしろいひとも巻き込んでやっていこうとポジティブに考えられる方も大歓迎です。

冨澤:MK LAB TOKYOでは今までにはなかった研修を行う予定です。工場や協力メーカーでの研修や、実際の店頭販売を通じた調査なども考えています。また、渋谷勤務が中心にはなりますが、メガネトップの一員として、定期的に静岡本社にも通っていただきたいと思っています。本社には社員が150人ほどいますが、コミュニケーションも活発で、社員やビル内の方と一緒に行うフットサルには、私も参加しています。年末の忘年会などもかなり盛り上がりますね。もちろん残業がある部署もありますが、よく遊んでよく働く文化です。

社内の変革を通して、アイウェアメーカーとしてのチャレンジを

冨澤さん

冨澤:MK LAB TOKYOの活動を通して、地方の店舗スタッフ一人ひとりにまで、いままでのPB商品になかった新しさへの期待を持ってもらえるんじゃないかなと思っています。以前、店舗スタッフによる商品開発を行った時もそうでしたが、商品が完成するまでのワクワク感を楽しみ、店頭に出た時の嬉しさを感じ、商品に愛着を持って販売する。そんな一連の流れを仕事のモチベーションにしてもらえるのも、自社工場と福井や鯖江のネットワークがあるからこそです。そんなワクワク感を生む場所として、MK LAB TOKYOという名前がいい意味で一人歩きをして、今後MK LAB TOKYOに参加したいという社員が増えていくといいなと思います。

櫻井:MK LAB TOKYOにかかわるデザイナーは、アイウェアに限らずに、やろうと思えば無限の可能性があるんですよね。社長と近い距離でコミュニケーションができますし、ラボに関わる企画ならなんでも提案できるこの環境が、MK LAB TOKYOの最大の魅力だと思います。

自分がかかわった商品が、966もの店舗で販売されるという、デザイナーとしてはめったにないマーケットが約束されている、なかなかない機会だと思います。たとえ自信がなくても、積極的に発言することで自分をさらによくしていくことができるような、そんなひとこそMK LAB TOKYOでいい化学反応を起こせるんじゃないかと思います。

冨澤:弊社には「チャレンジ精神を持つ」という行動理念もありますから、MK  LAB TOKYOで一緒に挑戦していけたらと思います。今後弊社にとって財産となるプロジェクトにしていきたいので、期待感を大事にしながらみんなで成功の道を探っていきたいです。

櫻井さん、冨澤さん

PROFILE
株式会社メガネトップ

冨澤昌宏 代表取締役

2005年メガネトップ入社。常務などを経て2009年社長に就任。「眼鏡市場」や「ALOOK」などを全国に展開し、2012年に創業当初からの目標である、眼鏡業界売上高No.1を達成。以降業界を代表するリーディングカンパニーとして国内外問わず成長を続けている。

櫻井憲一郎 商品開発部 商品開発グループ長

2006年メガネトップ入社。「ALOOK」の商品企画・開発担当を経て、2017年12月から「眼鏡市場」商品開発グループ長に就任。眼鏡市場商品の中心を担うプライベートブランドの企画・開発を年間200型以上手掛けている。