株式会社ドラフト
構成・文:開洋美 撮影:木澤淳一郎

公開日:2016/07/04

働き方インタビュー

クライアントの引き出しを開け続け、潜在的な部分をカタチにする

株式会社ドラフト

高橋紗枝子 ディレクター / ゼネラルマネジャー

オフィスや店舗の空間デザインを手がける会社、株式会社ドラフトに入社して6年になる高橋紗枝子さん。現在は部署のゼネラルマネージャー兼デザインディレクターとして多くの案件に携わる。将来的にはホテルや空港のデザインを手がけてみたいと話す高橋さんに、仕事の魅力ややりがい、仕事に対する想いなどについて伺った。
Q. 高橋さんのお仕事について教えてください

私たちの仕事はおもにオフィスや店舗、商業施設などの空間デザインを手がける仕事です。企画やデザインはもちろん、設計から施工、プロジェクトマネジメント、アフターフォローまでトータルで手がけているので仕事の範囲も多岐にわたります。会社の中でのポジションでいうと、設計やデザインを担当する制作部署のゼネラルマネージャーを務めています。デザイナーとしてはディレクター。お客様からコンセプトをヒアリングして方向性を考え、全体を俯瞰して見るプロジェクトの舵取りのような役割です。

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Q. いまのお仕事をする前はどんなお仕事をしていましたか?

やはり今と同じように店舗や飲食店などの設計・施工を行う会社に勤めていました。もともと専門学校でもインテリアデザインの勉強をしていたので、学生時代から一貫してインテリアに関わっています。

Q. ドラフトに入社しようと思った決め手

私が入社したのは6年ほど前ですが、決め手は面接の時の感触です。前の会社を退職したあと、やっぱり今までのことを活かせる仕事に就きたいと思いました。具体的にどんな会社に入りたいかと考えた時に、単に会社にこもって図面を引くのではなく、ちゃんとお客様と会ってコミュニケーションをとり、売り上げにつなげられるという一連の流れを任せてもらえる会社に入りたいと考えました。

代表の山下は面接した際に、「何年後に会社の規模をこのくらいにしたい、現状の売り上げはこのくらいだから次の年はいくらの目標を立てたい」など、将来的なビジョンをとても具体的に話してくれました。面接の時にそうした話が聞けたことで、信頼できてオープンな会社だと感じ、ここで仕事がしたいと強く思いました。

コミュニケーションの中から生まれるアイデアを大切にする


Q. ドラフトの社風を教えてください

オフィスの雰囲気が開放的でオープンな印象があると思うんですが、それと社風がリンクしているような感じです。困った時や悩んでいる時は代表や役職のある社員に関係なく相談したり聞いたり、その辺の垣根をあまり感じさせません。普段の何気ないコミュニケーションの中から発想やデザインのアイデアが生まれることも多いと思うので、それを大事にしている会社ですね。

現在のオフィス

現在のオフィス

さまざまなプロジェクトが同時進行で動いている中で、時には思い通りに進まないこともあるのですが、そういったこともきちんと改善点を探りながら常にレベルアップしていけるように、全員で情報共有して話し合う場を大切にしています。その点は会社の規模が小さかった時から変わらないので、この先もっと会社が大きくなっても変わらないんだろうなと思います。

Q. 入社して最初に手がけたプロジェクト

いちばん最初に担当した仕事が自分たちのオフィスでした(笑)。ドラフトのオフィスは移転ごとに5人くらいのプロジェクトメンバーを組み、自分たちで一から設計しているんです。しかも極秘プロジェクトで進むのでほかのスタッフは空間のイメージを知らされず、出社して初めてお披露目というサプライズ付きで。

入社して最初に手がけた、渋谷のオフィス

入社して最初に手がけた、渋谷のオフィス

最初の仕事はひとつ前の渋谷のオフィスでしたが、現在働いているオフィスもプロジェクトメンバーとして設計に携わりました。不思議なことに、クライアントのオフィスのデザインを考える時はイメージが湧くんですが、自分たちのオフィスがいちばん難しいんですよね。

Q. ここ最近で印象に残っているプロジェクト

昨年11月に私がディレクターとして関わったオフィスの設計ですね。お客様にヒアリングした時のオーダーが、「良い意味で、期待を裏切れるようなオフィスをつくってください」でした。キーワードはそれだけ。その1つのキーワードから色々なデザインを提案して取り組めたのはおもしろかったです。230坪のワンフロアだったので空間を贅沢に活かし、他にはないインパクトやオフィスという概念を超えた演出を取り入れたくて、中央に暖炉を計画しました。細かなオーダーをいただくこともありますが、それがほとんどなく、こちらの提案に乗ってくださった案件だと印象に残っています。

印象に残っているという、株式会社プロディライトのオフィス空間

印象に残っているという、株式会社プロディライトのオフィス空間

どうやったら楽しい状態にもっていけるかを考え、アドバイスする


Q. 仕事をしていて「楽しい」と思える瞬間

最近は、人の成長を見るのが楽しいなと思います。たとえば一緒に働いている後輩が、去年できなかったことが今年普通にできるようになっていたりする。内容は何であれ、そこを見つけてあげるのがすごく楽しいんです。クリエイティブな仕事だからこそ、楽しみながら仕事をするってとても大切だと思っていて、それぞれ抱えている仕事に対していろいろ悩みながらやっていますが、結局悩んだら仕事が楽しめなくなるんですよね。だから後輩に何かを相談されてアドバイスする時には、どうやったらこの人を楽しい状態にもっていけるかなって常に気にしながらアドバイスしています。とはいえ時には厳しく、時には優しく、飴と鞭を使い分けている感じでしょうか(笑)。

Q. 反面、大変な面や難しいと感じるところ

この仕事って意外にソルジャーな一面があるんです。最近はご指名いただくことも増えましたがコンペに参加することもあり、そういった意味では日々チャレンジを繰り返している感覚です。また、結果についても全員が集まる場で共有し、より最善なプランは何だったのかについて話し合っているんです。どの案件にもプレゼンテーションの段階からいろんな人が関わるので、努力が無駄にならないようにきちんと準備をして望みます。

「正解はこう」っていう方向性をあえて外して提案を出すのは勇気がいりますが、でもそれをやっていかないと会社としてのデザインレベルは伸びないよねっていう話をよく代表ともしていて。かといって180度ひっくり返してしまうとヒアリングした意味がなくなる。その微妙なバランスは本当に難しいです。コンペでは毎回仕掛けて挑戦しての繰り返しですね。

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Q. この仕事のいちばんのやりがい

どの案件も最初はお客様へのヒアリングからはじまります。こんな内装にしたいとビジョンがはっきりしている方も割と多いのですが、実際に話を聞いていくともっとこうしたほうがお客様の要望を活かせる、もっとこうしたほうがその場所で過ごす人にとってより良い環境になるんではないか、というのがだんだん見えてくる。だから一概にお客様が抱いているイメージや、お客様のやりたいことだけを叶えて形にするのも違うかなと感じているんです。

私たちは常にお客様の引き出しを開け続けて、お客様自身も気付いていない潜在的な部分を最大限に引き出して形にする必要があると思っています。その上で、デザインしたオフィスや店舗がお客様のビジネスや集客に貢献できたりすることがいちばんのやりがいでもあり、そうした過程でのお客様とのコミュニケーションもまた魅力の1つだと思います。

新しいことに挑戦するため、フラットな状態でいるように意識する


Q. 仕事をする上で心がけていること

1つは相手の話をじっくり聞くことです。やっぱりお客様にもいろいろな方がいらっしゃいます。話の途中で少し疑問に思うことがあってもいったん最後まで話を聞き、自然な誘導ができるように心がけています。2つ目は自分の好き嫌いで判断しないこと。お客様の要望を聞いてお客様に合ったデザインを提案するので、オールジャンルに対応できるという点が会社の強みでもあります。仕事では常に新しいことに挑戦していきたいと思っているので、その時に自分の好みのテイストが邪魔してしまわないよう、いつでもフラットな状態でいるように意識しています。

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Q. これからどんなお仕事をしていきたいですか?

案件の大小にかかわらずドラフトの来年、再来年につなげられるような仕事をしていきたいと思っています。将来スタッフが成長した時に、強みと言えるような。そのために、これまでやったことのないようなことも提案していければと。あと将来的なことでいえば、ホテルや空港のデザインに興味があります。今携わっている仕事はオフィスやアパレルの店舗が中心ですが、もっと不特定多数のジャンルの人が集まるような施設のデザインを手がけてみたいですね。

Q. 高橋さんのお仕事をほかの言葉で表すと?

ほんの些細なことですが私たちのデザインやレイアウトを通して何かが変わったり、仲の悪かった人が仲良くなったり、それまで叶わなかったことができるようになることって少なからずあると思うんです。時には悩んでいるお客様の背中を押す役目も。そういった意味では「きっかけづくり」という言葉がしっくりくるでしょうか。

PROFILE
株式会社ドラフト
2008年に設立のインテリアデザイン会社。オフィスや店舗、商業施設などの空間デザインにおいて、企業のブランディング戦略の実現や新しい価値を創造するデザインが国内外で評価を受けている。

https://draft.co.jp/

高橋紗枝子 ディレクター / ゼネラルマネジャー

設計事務所にて専門店や飲食店舗の設計・デザインの経験を積み、2010年DRAFTに入社。現在は、オフィスやショップ、スタジオなど幅広い空間デザインを手掛けている。