株式会社ConcePione
執筆:かたおか由衣 写真: 井手勇貴 取材・編集:岩渕真理子(JDN)

公開日:2026/01/29

働き方インタビュー PR

Z世代がつくる“次世代のデザイン事務所”-ConcePioneが重視する「人間性」

株式会社ConcePione

一法師拓門 (代表取締役社長)

小川はる (アートディレクター)

デザイナーの一法師拓門さんが東京・南青山で立ち上げたデザイン会社の株式会社ConcePione(コンセピオン)は、全メンバーが20代、美大・デザイン専門学校の卒業生が半数以下というチーム。ブランディングからビジュアルデザイン、プロダクトなど幅広く手がけ、アップサイクルデザインの分野では環境省の公認事業者に選出されている。

広告代理店を通さず、すべてのクライアントと直接対話し、デザインだけでなく「ブランディング全体を担う」という彼らが考える“次世代のデザイン事務所”とは?代表の一法師拓門さんと、アートディレクターの小川はるさんにお話をうかがった。

ラグジュアリーブランドからはじまったConcePione

——まずは、一法師さんのご経歴とConcePione立ち上げの経緯を教えてください。

一法師拓門さん(以下、一法師):高校を卒業後、ヨーロッパでファッションデザインを学びました。その後、日本のドメスティックブランドやヨーロッパのファッションブランドでデザイナーとしての経験を積みました。グラフィックデザインチームに所属していたため、パーカーやクッションなど、アパレルアイテムのグラフィックデザインを多数担当しました。

一法師拓門(いっぽうしたくと)さん

一法師拓門(いっぽうしたくと)さん

一法師:ConcePioneを立ち上げたきっかけは、コロナ禍でした。ファッション業界では契約社員が主流で、雇用が不安定な側面もあります。新型コロナウイルス感染症の影響で仕事の継続が難しくなり、一度立ち止まってキャリアを見つめ直すことになりました。

その後も、ブランドの仕事に関わりながらグラフィックデザインの経験を積み重ね、オンライン販売が主流となったコロナ禍において、アイテムにおけるグラフィックやロゴの重要性を強く意識するようになりました。担当していたデザインを見てくださった方々から個人的にロゴデザインの依頼が増えたことをきっかけに、2021年にConcePioneを立ち上げ、2023年に法人化して独立へといたります。

——小川さんはどのような経緯で入社されましたか?

小川はるさん(以下、小川):幼少期から海外文化に興味があり、高校時代に1年間アメリカへ留学しました。その頃から海外のデザインに惹かれ、関心が芽生えていました。大学は法政大学グローバル教養学部に進学し、ファッションへの興味から青山学院大学のファッションブランドサークルに入りました。そこは自分たちでファッションブランドをつくるサークルで、一法師さんが顧問をしていたんです。

小川はるさん

小川はるさん

小川:このサークルでリーダーを務めていたので、一法師さんと深く関わる機会がありました。「将来、デザインをしたい」と相談したところ、ConcePioneでアシスタントからはじまり、大学2年生からはインターンをしていました。卒業後、そのまま入社しました。

クライアントとの「対話」でブランドをつくる

——ConcePioneの仕事の特徴を教えてください。

一法師:広告代理店を通さず、すべてのクライアントと直接取引しているんです。そのため、クライアントの声をダイレクトに聞けます。戦略立案から最終アウトプットまで担えるのは、直接の取引だからこそですね。

小川:当社はヒアリングを通じて、クライアントの意見を把握することを大切にしています。クライアントの要望をビジュアル化するのが、私たちデザイナーの仕事だと考えています。自分たちがやりたいものを押し付けるのではなく、クライアントが望んでいるものをちゃんとビジュアル化する。そのために、クライアントをよく知ることを大事にしています。

これまでに手がけてきた案件

これまでに手がけてきた案件

——現在、どのくらいのプロジェクトが動いているのでしょうか?

小川:同時に動いているプロジェクトは、約25件にのぼります。レストランのデザインをしていたと思ったら、スポーツや化粧品の案件が来ることも。グラフィックだけでなくWebも手がけるなど、領域は幅広いです。

一法師:僕らがしていることは、ブランディングにつながるデザインの開発です。ロゴをつくる、色を決めるだけではない、プロジェクトにおけるブランドの全体像の決定に関わるので、ロゴやカラーパレット、店内の雰囲気、メニューなど、ありとあらゆるものすべてをデザインしています。

——デザインをする上で大切にしていることは?

一法師:デザインは“ソリューション”です。そのため、自分の中に答えはありません。答えを持っているのはクライアントなので、重視しているのは“対話”です。自分よがりなデザインになっていないか、中身のないデザインになっていないか。誰が聞いても納得感のある、説得力のあるものを生み出すことを大切にしています。

Z世代がつくる“次世代のデザイン事務所”-ConcePioneが重視する「人間性」

一法師:僕たちのデザインは、感覚ではなく“ロジカル”に。これは、前職のファッションブランド時代に叩き込まれた感覚でもあります。

例えば、シャツの胸ポケットの形は、四角やホームベース型などいろいろ考えられます。でも、大切なのは「なぜこの形にしたのか」と聞かれた時に、「なんとなく」と答えないこと。「感覚でデザインをしない、徹底的に自分のデザインに筋を通すこと」を言われ続けてきました。何をデザインするにしても「なぜこうしているのか」を考えるようになりました。

小川:私は“ギブの精神”です。会社としても掲げていますが、「We give more than we take=得るよりも与える」。クライアントの期待を上回る何かを、常に届けたいと思っています。

クライアントとの信頼をどう築くか?

──小川さんがこれまで手がけた中で印象的なプロジェクトを教えてください。

小川:東京・表参道にあるレストラン「TWO ROOMS」のリブランディングです。2009年開業のラグジュアリーレストランで、アートディレクターとしてブランディング全体の方向性をまとめました。

小川さんがデザインした「TWO ROOMS」のロゴデザイン

小川さんがデザインを再構成した「TWO ROOMS」のロゴデザイン

小川:既存のロゴデザインを活かしつつバランスを整え、シンプルでありながらエレガントなスタイルを目指しました。カラーパレット、メニュー、フォント、Webサイトまですべて制作。インテリアの全面改装に合わせて、統一感のあるビジュアルを構築しました。

リブランディング後に表参道と六本木の駅に出稿した大型広告の制作も担当しています。

駅に掲出された広告

駅に掲出された広告

──プロジェクトはどのように進めていったのでしょうか?

小川:このプロジェクト期間は約1年で、目指す方向性や、これまで届ききれていなかったターゲット層へのアプローチ方法などを話し合いながら進めていきました。もともとは、シックでクラシカルな雰囲気をまとっていたブランドイメージを、ベージュを基調とした洗練されたモダンラグジュアリーな方向へ転換しました。

一法師:3名のオーナーはみなさん海外の方なので、ミーティングはすべて英語でした。小川はアメリカ留学経験があるので、英語力が活きましたね。有名店のプロジェクトということもあり、周囲からポジティブな声を多くいただきました。小川にとっても、クライアントの信頼をどう築いていくか、自分自身でプロジェクトを回していくことを体現できた案件だったと思います。

小川:ここまで大きな案件で全体を見たのは初めてでした。3名のオーナーのうちの1人がシェフだったのですが、シェフは「お皿1枚の上で料理をどう表現するか」を追求する仕事です。デザインへのこだわりも並々ならぬものがありました。写真の見え方などの細部まで丁寧なフィードバックがあり、どのクライアントよりもやりとりが多かったです。異なるフィールドの方からの視点は、とても勉強になりました。

シェフとともに考えた一皿

提供されている料理の写真

Jリーグやトヨタとも取り組む、アップサイクルデザイン

──一法師さんが手がけた中で印象的なプロジェクトも教えてください。

一法師:トヨタ自動車のアップサイクルプロジェクト「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」です。弊社では、アップサイクルデザインなどのサステナブルなデザイン開発も強みとしていて、スポーツチームなどで同様のプロジェクトに関わっています。今年は環境省のデコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)推進事業にも採択されました。デザイン系の会社では、おそらく当社のみだと思います。

「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」ビジュアル

「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」ビジュアル

一法師:スポーツチームと関わるようになったきっかけは、サッカークラブ「名古屋グランパス」のエンブレムのリニューアルでした。2024シーズンから新しいエンブレムを使用するので、旧エンブレムを使ったバナーやフラッグを廃棄せずにグッズにできないかと相談をいただいたんです。

デザインを担当したオリジナルグッズはとても好評となり、ここからさまざまなJリーグ所属クラブに発展することになりました。現在、Jリーグだけでなく、そのほかのスポーツクラブなど48チームと取り組んでいます。スポーツ業界での実績が積み重なって、環境省から声がかかり、トヨタの方もそれをきっかけに弊社に興味を持ってくれました。

名古屋グランパスと取り組んだオリジナルグッズ

名古屋グランパスと取り組んだオリジナルグッズ

──トヨタのプロジェクトでは、どのような領域を担当されたのでしょうか?

一法師:トヨタ自動車は製造過程で大量の廃材が出ます。それをプロダクトに変えて販売したいという要望でした。すでに「TOYOTA UPCYCLE」として取り組まれていましたが、よりファッション性の強いブランド開発を手伝ってほしいという依頼でした。

車のシートレザーの端材は、製造工程でどうしても余ってしまいます。その端材は一つひとつが不規則な形をしているため、きれいな面が残っていない。そのため、継ぎはぎでデザインをつくり、いかに魅力的に見せるかを何度もテストしました。

「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」のアイテム

「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」のアイテム

一法師:「Tsugi-Craft 」という名前には、「次」につなぐ、そして職人の技術「クラフトマンシップ」を大切にするという意味を込めています。ブランド全体のビジュアル、撮影、動画、Webサイト、タグライン、キャッチコピー、ブランドの人格構成まですべてを担当しました。一般的には1社で手がけない領域までカバーしています。販売したプロダクトは、想像を遥かに超える売上を達成しています。

次世代のデザイン事務所を一緒につくる

——ConcePioneで働くやりがいはどんなところにありますか?

小川:少人数だからこそ、自分の意見が責任を持って通るところです。また、社会的意義のあるプロジェクトが多い。Z世代の会社として、次世代をつくる立場で見ていただけるからこそ、いいプロジェクトに関われる機会が多いです。

また、業界内で注目されている社長がすぐ近くにいて、そのロールモデルをサポートできる。一番近くでその姿を見られることが、何よりの勉強になります。デザイナーを目指す人にとって、これ以上ない環境だと思います。

一法師:「あなただからやってほしい」と言われた時、その信頼に応えなければと思います。ただ納品をするのではなく、より上位の視点での対話を求められていると感じる時に大きなやりがいを感じます。

——お二人とも、学校でデザインを体系的に学んだ経験はないそうですね。

一法師:そうなんです。現在、社員6名と業務委託4名を合わせた計10名のチームにおいて、美大やデザイン専門学校の出身者は、実は半数にも満たないんです。「デザインが好き」「ソフトは独学で習得する」といった、熱量の高いメンバーが集まっています。僕自身も、実践を通じて現在のキャリアを築いてきました。だからこそ、バックグラウンドを問わず、志を共にする方を広く迎え入れたいと考えています。

デザイン業界は経験者重視の傾向が強いですが、当社には人を育てるキャパシティがあります。まっさらな状態から、ConcePioneならではのクリエイティブを一緒に形にしていきたいですね。

——採用で重視していることや、どのような方が向いているかをお聞かせください。

一法師:重視しているのは人間性ですね。スキルか人間性かで聞かれても、絶対に人間性で採用します。スキルは伸ばせますが、人間性は変えられません。“いい人”を採用した方が、社内のムードもよくなります。

いま私たちが意識しているのは、「デザイナーを育てる」よりも「人間を育てる」ということです。AIが急速に発達し、作業的なデザインは代替されつつあります。今後残るのは、その人間に価値があるかどうか。自分軸をしっかり持って仕事に取り組める人と一緒に働きたいですね。クライアントからも「その人に決裁を委ねられるかどうか」とよく聞きます。

あとは「守破離」を理解できる人。ひたむきに真面目にやってもらえれば、安心して背中を預けられる環境は用意しています。若いから「ノリでやっているのでは……」と思われることもありますが、むしろ真逆です。石橋を叩いて渡るような会社です。冷静に、着実にやる。インテリジェンスを大事にしています。

小川:熱量があって、何でもやってみたいという好奇心がある人が向いていると思います。グラフィックだけでなくWebも手がけるなど領域が幅広いので、自分にバリアを貼らないフレキシブルな人が向いていると思います。

Z世代がつくる“次世代のデザイン事務所”-ConcePioneが重視する「人間性」

小川:もうひとつは、自分のデザインに責任を持てる人。誰かがチェックしてくれるからと惰性になった瞬間、デザイナーではなくなります。プライドと責任を持つことが大切です。

一法師:グローバル思考の人もフィットすると思います。スイスにもメンバーがいますし、海外出張も多いので、世界レベルのデザインをやりたい人にはいい環境です。

——最後に、これからの展望をお聞かせください。

小川:海外に進出したいですね。海外で有名なデザイン会社のランキングを調べると、日本の会社はほとんどありません。いまは日本のクライアントの仕事として海外に行くことはありますが、海外のクライアントと直接取引できる、日本を代表する事務所になれたらと思います。

一法師:約1年前、会社の屋号を「コンセピオン デザインスタジオ」から「コンセピオン デザイン&ブランディングエージェンシー」に変更しました。これが今後の展望のすべてを表しています。デザインの職人集団をつくりたいのではない。目指しているのはブランディングからデザインするチームです。

デザインはひとつの要素に過ぎず、全体をブランディングしていくことが重要です。海外のデザインエージェンシーでは、「デザイン」という言葉に「ブランディング」が内包されているんです。しかし、日本ではブランディングを強みとする会社は多くありません。デザイナーであり、ブランドディレクターでもある。そういう人材をたくさん育てていくこと。これが、僕たちの今後の展望ですね。

【求人情報】
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Z世代がつくる“次世代のデザイン事務所”-ConcePioneが重視する「人間性」

PROFILE
株式会社ConcePione
次世代のデザイン業界をリードする、クリエイティブカンパニー。情熱を持つみなさまの価値を適切に社会に伝え、ブランドとして認知されるための戦略・デザインを提供することを使命としている。ブランド戦略の共同者として、ナラティブの構築からコンセプト設計、ビジュアル制作まで一貫した取り組みをおこなう。

一法師拓門 (代表取締役社長)

日本を代表するZ世代クリエイターとして多くのプロジェクトにおいてデザイン・クリエイティブの制作を担当。国内外のファッションブランドでデザイナーとして従事した後、デザイン事務所「ConcePione」を立ち上げ、独立。ロゴをはじめとして多様なグラフィックデザインを生み出し、現在はブランド戦略のディレクターとして、ナラティブの構築からコンセプト設計、ビジュアルデザインまで一貫して手がけている。

小川はる (アートディレクター)

法政大学グローバル教養学部卒。大学時代からのインターンを経て、卒業と同時にConcePioneへ入社。その後もデザイン力に磨きをかけ、現在はアートディレクターとしてデザイナーメンバーをまとめながら業務にあたる