株式会社BIRDMAN
取材・文:瀬尾陽(JDN) 撮影:葛西亜理沙

公開日:2017/11/07

クリエイティブなオフィス探訪

チーム力と技術力、そして高い相互理解力を武器に、新しい広告の体験をつくりだす

株式会社BIRDMAN

クリエイティブな作品はどのような場所から生まれるのか?連載「クリエイティブなオフィス探訪」の第3回目にお邪魔したのは、Webはもちろん、インタラクティブなインスタレーションや制作物、リアルイベント、最近ではライブ体験にこだわったプロモーションなどで話題を集める「BIRDMAN」です!「NIKE UNLIMITED STADIUM」(NIKE)「IS JAPAN COOL? DOU」(ANA)など、驚きを与えてくれる広告の数々が生まれる土壌には、ユニークなオフィスと社内制度があるようです。BIRDMANというチームの強さを探っていきたいと思います。
NIKE UNLIMITED STADIUM(2016)

NIKE UNLIMITED STADIUM(2016)

NIKE UNLIMITED STADIUM(2016)

NIKE UNLIMITED STADIUM(2016)

2004年に設立された「BIRDMAN」は、東京とNYをベースにした最先端のデジタルプロモーションを手がける精鋭チーム。ソフトウェアでもハードウェアでも、いままで見たことがない/体験したことがないようなモノをつくり、世界を驚かせるようなチャレンジをし続けています。

Cannes Lionsゴールド、OneShowゴールド、広告電通賞デジタル部門グランプリ、Code Awardグランプリ、ADFESTゴールド、Spikes Asiaグランプリなど、国内外にて300以上(!)のアワードを受賞。Webアワードの権威「Favourite Website Awards」においては受賞数世界29位。国内では日本一の受賞数を誇るそうです。

オフィスに飾られた、さまざまなアワードで受賞したトロフィーの数々

オフィスに飾られた、さまざまなアワードで受賞したトロフィーの数々

BIRDMANは、千駄ヶ谷に「BIRDMAN’S Nest」(設計:ミリグラムスタジオ)と「BIRDMAN’S Cave」(設計:トリノス建築計画)という2つのオフィスを構えています。外観からして異彩を放っていますが、「Nest=巣」「Cave=洞窟」というだけあって、内装もなかなかユニークです。それぞれのオフィスについて、株式会社BIRDMAN代表の築地 ROY 良さんにお話をうかがいました!

株式会社BIRDMAN代表・築地 ROY 良さん

株式会社BIRDMAN代表・築地 ROY 良さん


BIRDMAN’S Nest

BIRDMAN’S Nest外観

BIRDMAN’S Nest外観

「BIRDMAN’S Nest」では、CG&ムービーチームが働いています。2007年くらいまで、中野の自宅をオフィスと兼用していたんですけど、スタッフが入りきらなくなったので別の場所を探すことになり、現在のBIRDMAN’S Nestの場所にあった中古の戸建てを購入しました。本当にふつうの住宅だったのでアットホームな雰囲気でした。というかホームでしたね。「ただいま」みたいな(笑)。

お客さんが来た時に、靴を脱いでもらって「お邪魔しまーす」みたいな感じになるのが実はすごく嫌でしたね……。それで、2年くらいかけてお金を貯めて、いったん更地にしてから「BIRDMAN’S Nest」を建てました。設計はミリグラムスタジオの内海智行さんで、ステップフロアの吹き抜け構造になってます。上階は夏になるとかなり暑いです(笑)。

BIRDMAN’S Cave

BIRDMAN’S Cave外観

BIRDMAN’S Cave外観

BIRDMAN’S Caveは2014年の2月に完成しました。設計はトリノス建築計画の大友和樹さんです。ディベロッパーチーム、デザインチーム、ディレクションチームが働いています。

ここには以前はアパレル会社が入っていました。外壁に白いタイルが貼られていて、いまとはぜんぜん違う印象でしたね。震災後にここから退去しようとしていたみたいで、人の出入りがなくなっていました。ここを管理していた不動産屋さんに「この物件が空いたら声かけてください」とお願いしたら、その不動産屋さんがけっこうイケイケで(笑)。「いまから大阪にいるオーナーに会いに行ってきます!」と言って、すぐに大阪に行って交渉してくれました。そのおかげで手に入れることができたんですよ。

東日本大震災は多くの人にとって記憶に残っているように、僕もすごく将来のことを考えるというか、人生の帰路に立たされるような気持ちになりました。「この規模の会社のままで果たして本当にいいのか?」と。BIRDMAN’S Nestを建てたときには、会社を15人規模以上にしないと決めていましが、あえて人を増やしてもいいのでは……?と、考えるようになりました。

それはなぜかというと、BIRDMANというチームでアワードを獲りたかったんですね。当時はカンヌライオンズとか夢のまた夢でしたが、いつかはチャレンジしたいなあとずっと思っていて、それを実現するには15人だと難しかったんです。1つのプロジェクトに3〜4人くらい必要だし、アワードを狙いに行くプロジェクトに本腰を入れると、会社自体が回らなくなる。いまのままでは絶対無理だなと思って、ここはがんばって30人にまで増やそう!と決断しました。結果的には40人にまで増えてしまったんですけどね(笑)。

——ここからは改めてBIRDMANというチームが重視していること、BIRDMANだからできること、そしてこれからのこともうかがってみました。

最先端のデジタルプロモーションを手がけるBIRDMANができるまで


設立が2004年なのでけっこうロングストーリーですよ(笑)。もともと、僕はオーストラリア人で、向こうの大学を出てそのまま働いていました。日本に来たのが1998年くらいで、広告制作会社で働くことになりました。そのときはグラフィックデザイナーとして入社したんですけど、実はグラフィックよりは映像をやりたかったんですよね。いくつか映像会社も受かったんですけど、その当時の映像の業界はすごく細分化されていて、CGつくる人はCGしかつくらない、編集の人は編集しかしないみたいな感じで。それは違うかなあ……と思って、グラフィックデザイナーとして働きはじめんですけど、結局やりたかったことは、グラフィックも映像も全部自分でつくることだったんですよね。

2000年ぐらいになって、Flashが出てきはじめた時に「何だこれは……!?」と、ものすごく驚きました。デザインもできるし、動きも構成もストーリーも、これならすべて自分でつくれると感じたので、独学で本とかを見ながら自分のホームページをつくりだしたんです。それが雑誌「MdN」に載って、そこから仕事がくるようになりました。

それからは会社員と二足のわらじです。俺なんかがやっていいの……?と思うような、大きなクライアントのWebの仕事も手がけるようになりました。Webがどんどんインタラクティブな表現に変わっていく時期で、おかげさまでたくさんの人に見てもらえましたね。まだその頃は会社としてではなく、「SPICED GRAPHIX」という屋号でカミさんと2人でやっていたのですが、クライアントにも恵まれて順調だったので、会社として設立してスタッフを雇うようになりました。そこからは毎年倍々に増えていきましたね。

お互いの技術への理解が強いチームをつくる


うちの会社はクライアントから案件が来ると、オリエンをいついつにやるので、興味のある人は来てください、みたいな感じでメールを全社員に送ります。いわば挙手制なんです。案件の内容は、プロダクト開発からイベント、Webとさまざまで、オリエンに集まる人もデザイナー、デベロッパー、ムービーチーム、自分の肩書きを気にせずに集まってくる、そこがうちの特徴かもしれないですね。基本的にプランナーにだけ任せるということがないので、みんな10案とかは持ってくるようにします。

取材時にも新規案件のオリエンに多くのスタッフが集まっていた

取材時にも新規案件のオリエンに多くのスタッフが集まっていた

組織としては、ディレクションチームと、デベロッパーチーム、デザインチーム、CG&ムービーチームで構成されています。デベロッパーチームは、ソフトウェア側とハードウェア側に分かれています。でも、決められた仕事だけをやるという人はいなくて、会社としてはあまり肩書きに縛られないようにしたいんですね。できないことがあるのが悔しい!みたいに思ってくれるのが理想的なので。だから、チームビルディングに関しては完全に流動的ですね。

これまで組織づくりに関してはトライアンドエラーを重ねてきています。4年くらい前にデベロッパーチームのトップのクリエイター2人が同時に辞めることがあって、お互い別々のことを進めていたので、正直お先真っ暗になりましたね……。ですが、次の年には前年よりもいい成績を残せたんですよ。結果論ですが、人が辞めることをきっかけに若い人たちがかんばってくれたんです。昔は誰かが辞めるということにビクビクしていましたが、いまは誰が辞めても大丈夫なくらい強い組織になりました。毎回泣きそうにはなりますけど。

名の知れたスター選手みたいな人がいる会社もありますが、そういう人はうちにはいなくて。いないって言ったら語弊があるかもしれないんですけど(笑)。逆にいい意味でキャラクターがないというか。その分、うちはチームワークが強いですね。チームワークで乗り切る。そして誰かしらがフォローできる体制はつくれています。

お互いの領域の技術への理解はめっちゃ高いですよ。だからこそ、ほかの会社がつくれないようなものがつくれるという自負があります。最近オープンした、ANAの「IS JAPAN COOL? DOU」というコンテンツは、ムービーチームとデベロッパーが密に連携してつくりました。

けっこう凝った撮影をしながらコンテンツに落とし込んでいくので、外部の映像会社と連携していこうとするとなかなか難しかったと思います。すごく細かく指示しないと意図を理解してもらいにくいのと、スマホでも同じ体験ができるようにしていかなくてはならないので、単純に映像を撮影すればいいというわけではありませんでした。こういうコンテンツをつくっていくには、積み上げてきた技術とノウハウが大事なんですね。

コミュニケーションこそが重視すべきこと


うちはコミュニケーションを大事にしている会社なので、社員旅行にも行くし、月に1回は社内で通称「おつピザ会」もやっています。自分たちがコミュニケーションを取れていないのに、クライアントとのコミュニケーションはつくれないと思っているので。

毎月開催する「おつピザ会」は、5~6人1チームでピザや料理のレシピを考えてそれをみんなに振舞うということをしています。それ用にピザ窯もあります。クリエイティブの会社だから、チームによってはプロジェクションマッピングをして演出をしたりとか、それぞれでいろいろ凝ったこともやってますね。「おつピザ会」なのに、流しそうめんをやるチームもありました。なぜか会社に竹が届くという(笑)。

BIRDMAN’S Caveの3Fにはピザ窯もある

BIRDMAN’S Caveの3Fにはピザ窯もある

2週間に1回フリーランチも実施しています。ケータリングかお弁当をオーダーして、スタッフ40人みんなで食べる。最初はテーマを決めて話をしようと思ったんですけど、最近はもっぱら雑談です。みんないつもコンビニ弁当とかだったりするので、美味しいものを食べながらコミュニケーションを取るようにしています。

やっぱり、以前にGoogleやFacebookの本社を訪問した時に受けた衝撃は大きかったですね。社食も全部タダみたいなカルチャーで。それに影響されちゃっているので、そういうところでは惜しまないようにしています。

屋上ではBBQが実施されることも

屋上ではBBQが実施されることも

福利厚生もいくつかあって、会社から3駅以内に住んでいると月2万円の「住宅手当」が出ます。うちの会社は最寄り駅が5つくらいあるので、けっこういろんなところから通えると思います。

あと、子ども1人につき月1万円もらえる「子ども手当」、タバコを吸っていない人が月3000円もらえる「健康手当」があります。40人という規模だからこそ、そういうことを比較的自由に設定できるというところはあって、利益はなるべく社員に還元していきたいなと思っています。

グローバル化を目指すBIRDMANのこれから


まだ、ニューヨークオフィスができて1年経たないくらいです。ニューヨークオフィスをつくったことで、ビザなしでニューヨークに3か月行けるので、向こうで働いて刺激を受けて帰ってくる……みたいな、ある意味スタッフのモチベーションを意識した部分もありました。最近はすごく海外の案件が多くて、問い合わせも増えいてた時期だったので、海外に拠点をつくるのは必然といえば必然かもしれないですね。いまは、どうやってBIRDMANをグローバルで有名にするかを本気で考えています。東京とニューヨーク、11時間の時差をどうポジティブに使うかが課題ではあるんですけどね(苦笑)。

スタッフが5~6人だった頃は、みんなで一丸となって目標に向かっていたのですが、最近そういうのが少し足りなくなってきたところはあって。そういう意味でニューヨークにも拠点を構えたのは起爆剤というか、昔みたいにみんなで一喜一憂できたらいいなという想いがあります。BIRDMANと名乗るからには、常に羽ばたき続けないといけないので!

PROFILE
株式会社BIRDMAN
東京/NYをベースにした最先端のデジタルプロモーションを手がける精鋭チーム。 Webはもちろん、インタラクティブなインスタレーションやサイネージなどの制作物、リアルイベントなどの企画/制作に関わっている。ソフトウェアでもハードウェアでも、今まで誰も見たことがない/体験したことがないようなモノをつくり、常に世界を驚かせニュースになるようなチャレンジしている。
https://www.birdman.ne.jp/