トイレをはじめとする日本の水回り文化を支えるTOTO。新卒で入社して以来、数々の製品を世に送り出した迎義孝氏は、『ネオレスト EX』のモデルチェンジプロジェクトで、シリーズ発売以来のヒットという成功を収めた。
しかしその後、本人の希望によりウォシュレット担当からシステムキッチンのデザイン担当へと社内異動。インハウスデザイナーとして、どのような心境の変化による路線変更だったのだろうか。


自己完結型デザインからディレクション型デザインへ

インタビュー風景 「全国に6カ所あるTOTOのデザイン部門の中で、昨年まで所属していたのは、水栓や便器など一つで完結するような単体商品を扱うところ。いわばオリジナリティとか、自分らしさ、といったことが反映させやすいデザインですね。もちろんデザインセンターの大きなストーリーの中での範囲ですが。僕は“自己完結型”と言っているのですが。今は、システムキッチンや洗面化粧台、ユニットバスルームなど、複合して組み合わさったデザインをおこなう部署に在籍しています。やっぱり、『ネオレスト EX』で最高級のウォシュレット一体形便器をデザインできたことによって、一つ区切りがついたと実感したのがきっかけです」

空間や居住スペース全体を意識したデザインに関わるため、九州本社から千葉にあるデザイングループへと異動したのは、昨年のこと。

「目下、システムキッチンに関わっています。見た目以上に、デザインする部分は多いですよ。レンジフードやカウンターに加え、扉や把手の色と素材がバラバラにならないよう、テイストを統一しなければなりませんから」

レンジフードやIHあるいはガスコンロ部分など、異なるメーカーと協同する部品は特にコントロールが難しい。技術的にもこれまで以上に広範な専門知識が必要とされる。そこで、これまでの自己完結する方法論には固執しないことにした。

「ひとりでは決められないことも多くて、全部やりたいと抱え込んでもうまくいくことはないとわかり、仕事のスタイルを変えました。僕が思い描いている完成のイメージを伝えるというプロセスを、重視するようにしたんです。つまり、細かい部分のやりとりになると、実質的なデザインに関わる部分を開発や設計担当者にゆだねる場面もあるので、なぜこのイメージに仕上げたいのかを、彼らの思考に植え付けてしまうくらい、言葉やサンプルを使って説明するわけです」

リフォームが盛んになり、インテリアへの興味が高まっている最近の傾向を捉え、キッチンデザインで大切にすべきと考えたことが二つある。

「まず、いろいろな機能が集まって一つになるシステムキッチンに“顔”となる部分をつくること。また、全体を上質な素材で統一する繊細さによって高級感が生まれる家具のような考え方で、システムキッチンでも色や質感の細部にこだわること」

そういったコンセプトを軸に膨らませたイメージでものを作り上げる過程は、デザイナーというよりもディレクター的な要素が大きい。

「開発や設計担当者へ伝えるには、何度も時間をかけて繰り返すことができる。でも、実際に商品を購入して使ってくださるお客さんのところまで、そのイメージを到達させるのは大変なことだと思っています。たとえば、製品カタログに関して関連部門となんども議論したこともありました。最終的にはうまくいったのですが、もはや形をデザインするだけのプロダクトデザイナーではないと感じています。コーディネートというか、みんなを同じ方向へひっぱっていく舵取り的な役割ですね」

自己完結型のデザインに単独で取り組む仕事から、多くの人と関わりを持ちつつデザインを示唆する立場へ。携わる製品とともに迎氏本人の仕事スタイルもシフトしてきた入社7年目。
ただ、こうした周囲とのコミュニケーションを円滑にとる術は、一朝一夕に身についたのではなさそうだ。

インタビュー風景


ネオレスト EX
2002年に発表されたウォシュレット一体形便器。受賞多数。
素材の融合をコンセプトに、素朴な陶器部と、ハイテク装置である樹脂部を違和感なく一体化させることを目標として開発された。表面に施されたメタリック塗装は非常に厚く、蓋部分と本体では微妙に色調と彩度を変えているところも特徴。全体の形を見るより、上部から眺められる場面の多い製品なので見た目に同じトーンになるような工夫である。従来品よりも大きく、高級感を意識したデザインの背景には、たとえば高級車のドアが閉まるスムーズな音や上質な内装、洗練されたインテリア家具などと並ぶような高品質へのこだわりがある。手元の操作パネルにおいても、スマートな形状と無駄のないアイコン表示などによってハイクラス感を実現させた。




手がけた『ネオレスト EX』と共に


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「interview 2 / コミュニケーションで、アイデアを増幅させる」




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