まるで森に迷い込んだかと思うほど豊かな自然の残る、広大な敷地に位置する中央研究所。小さな渓流を渡り、大木を回り込んだ先の構内にデザイン本部はある。
いわゆる「白物家電」という言葉が生まれたのは1950年代、炊飯器、洗濯機、冷蔵庫など、当時憧れの家庭用電気製品がいずれも白かったから。現在ではカラフルでより多機能・高品質になっているが、昔からの通称は変わっていない。
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日立製作所ホームソリューションデザイン部の佐藤崇氏は、白物家電の王道・冷蔵庫に携わった後、この10月からパソコンのデザインへと担当が移った。家電と情報機器。一見かけ離れた領域に感じる両者だが、デザインの本質に違いはないという。
「冷蔵庫チームを刷新する動きと、僕が以前にパソコンを担当していたので、すぐやっていけるだろう、という見込みがあったようです(笑)。冷蔵庫を一年半担当し、ちょうど11月に発表になる新製品に丸々携わっていたので、すべきことを全部やり終え、形が見えたところなので心残りはありません。スケール感にしても、冷蔵庫自体はパソコンよりもかなり大きいわけですが、中の部品や棚なんかは小さいものなので、それほど差があるとは思っていません。プロダクトの中では近い範囲の製品です」
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新卒で入社してすぐに担当していたパソコンへ、戻る形の異動だ。
「大学を卒業したての頃は誰もがそうだと思うのですが、自分を表現したいという気持ちがすごく強い。だからAVや情報系はデザイナーの中でも人気があるほうだと思います。一方で、家電製品というのはそんなに主張せず、いろいろな要素をよく把握しつつ淡々とデザインする、渋い一面があります。そのどちらも知った上で、もう一度パソコンを客観的にとらえながらデザインできるのが今は嬉しい」
冷蔵庫に関わる以前には、デザインすべき部分がそれほどたくさんあるとは思っていなかったという佐藤氏。現実は、外観デザインの他にも内部部品の細かな位置関係や使い勝手へのこだわりを追求する、想像以上に地道なデザインワークだった。
「冷蔵庫を買い替えるのは一般的に10年に一度くらいと考えられています。その時に、いま使っている冷蔵庫に対する不満は当然なくしたいし、より容量が大きく、新しい機能があり、デザインもそれなりに良くなければ、とお客さんのチェック項目が幅広いんですね。
たとえば携帯電話やパソコンなどAV情報系の商品は、スペックとデザインを含めたイメージで選ばれることが多いような気がします。それに比べると冷蔵庫は、ユーザーの目が厳しいですね。実際に何度もハンドルを触ったり、内側を見てじっくり検討しますし、少しでも気になる部分があると選ばれないので」
当然、設計者との綿密なやりとりが欠かせない。内部のレイアウトは、実際の食材や容器をCADで描き、棚の厚みをプラスしながら積み上げて、ひとつずつ検証する。冷気の流れや断熱効果なども、打ち合わせながらていねいに詰めていく。
「店頭でお客さんが試したときに、たとえば缶ビールがちょっと棚に当たっただけでもネガティブに受け取られてしまうので、細かいデザインに気を配ります」 |